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アルジェリア議会、フランス植民地支配を犯罪と断定する法案可決

法案は植民地時代にフランスが移転したアルジェリアの文化財や公文書の返還、1960〜66年に実施されたフランスの核実験の詳細地図の提供、抵抗運動家の遺骨の返還をフランスに要求するなど、具体的な賠償内容を掲げている。
2025年12月24日/アルジェリア、首都アルジェの国会(AP通信)

アルジェリアの国民議会(下院、定数407)は12月24日、フランスによる130年にわたる植民地支配を「犯罪」と断定し、歴史的な不正に対する賠償と名誉回復を求める法案を可決した。採決の結果、340人が賛成票を投じ、フランス統治期(1830~1962年の独立まで)に関する一連の要求を盛り込んだ法案が成立した。

法案は植民地時代にフランスが移転したアルジェリアの文化財や公文書の返還、1960〜66年に実施されたフランスの核実験の詳細地図の提供、抵抗運動家の遺骨の返還をフランスに要求するなど、具体的な賠償内容を掲げている。また、フランス植民地支配を称賛する行為、アルジェリア抵抗運動の象徴への攻撃、植民地主義的な言説を行うことを刑事罰の対象とする規定も設けた。

議会での採決は象徴的な式典を伴い、巨大なアルジェリア国旗が議場を彩った。議長は冒頭演説で「今日、2025年12月24日は歴史的な日であり、国の物語に金字で記されるべきだ」と述べ、出席議員が国歌の一節を唱和した。法案を提起した元議員は2001年にこの取り組みを始めたと語り、「感慨と誇りに満ちている」と述べた。法案は全5章27条で構成され、植民地時代の犯罪には時効がないと明記している。

フランス政府はこの法案を強く批判し、「明白な敵対的行為」と表現した。外務省報道官は声明で、過去の植民地時代の問題に関して対話を再開する努力が続けられているとしつつ、この法律は両国間の和解を進める取り組みに逆行する可能性があると指摘した。フランスのマクロン(Emmanuel Macron)大統領は2017年にアルジェリア植民地支配を「人道に対する犯罪」と評したことがあるが、正式な謝罪は行っていない。

アルジェリアとフランスは文化的・経済的な結びつきを維持しているものの、両国関係は近年緊張している。特に西サハラ問題をめぐる対立や移民・安全保障に関する意見の不一致が影を落としており、今回の法制定はそうした背景も反映していると分析されている。専門家は、この法律が国際法上フランスに強制力を持つわけではないと指摘する一方で、政治的・象徴的な意味合いは大きいと評価している。

植民地時代のフランス支配下で、アルジェリアでは数十万人が戦争や暴力で命を落とし、多くの住民が抑圧と経済的搾取に苦しんだとされる。アルジェリア側は核実験や強制労働、文化遺産の略奪など多岐にわたる被害を列挙し、これらの痕跡が和解の障害になっていると主張している。今回の法案は植民地支配の歴史的評価を巡る議論を再燃させ、両国関係の新たな局面を示す出来事となった。

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