◎マリ、ブルキナ、ニジェール、チャドを含むサヘル地域は気候変動、洪水、干ばつの影響を強く受ける西アフリカの人道危機の震源地である。
国連は12日、紛争が絶えない西アフリカと中央アフリカで来年、5000万人近くが食料不安に直面し、250万人以上が飢餓の瀬戸際に立たされる可能性があると警告した。
国連、食糧農業機関(FAO)、その他人道機関・団体の関係者はセネガルの首都ダカールで会談後、記者会見を開き、国際社会に西・中央アフリカで未曽有の大飢饉が発生する恐れがあると警鐘を鳴らした。
これらの機関がまとめた報告書によると、同地域における食料不安の最大の要因は気候変動やインフレではなく武力紛争であり、特にサヘル地域(サハラ砂漠以南の広大なエリア)が最も打撃を受けているという。
マリ、ブルキナファソ、ニジェールではこの3年間で5回クーデターが発生。国際テロ組織アルカイダやイスラム国(ISIS)系組織の台頭を許す事態となった。
これらの過激派は軍政と欧米諸国が対立を深め、政治的混乱が広がるスキをついて支配地を拡大。多くの町・集落を占領し、市民を虐殺している。
FAOのアフリカ代表は記者団に対し、「この地域の最大の懸案事項は治安の悪化である」と語った。
マリ、ブルキナ、ニジェール、チャドを含むサヘル地域は気候変動、洪水、干ばつの影響を強く受ける西アフリカの人道危機の震源地である。
国連はこの地域だけで1000万人以上に支援を提供している。
ニジェールの国境はECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)の経済制裁で事実上封鎖されており、食料援助が難しくなっている。ECOWASはニジェールを除名処分としたうえで加盟国との国境封鎖、金融取引停止、資産凍結などの制裁を科した。
国連は11日、国際社会に対し、西・中央アフリカの市民3200万人以上に支援を提供するために76億ドルを拠出するよう要請した。
国連人道問題調整事務所(OCHA)のグリフィス(Martin Griffiths)事務次長(人道問題担当)は声明で、「国際社会の支援はニーズに追いついていない」と警告した。
またグリフィス氏は「来年、この地域にさらなる支援を提供できなければ、子供や女性を含む多くの市民が自らの命で代償を支払うことになるだろう」と述べた。