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西アフリカの3軍政がロシアに接近した経緯、対応見直す米国


マリ、ブルキナ、ニジェールでは2020年代に軍事クーデターが相次いで発生し、民政復帰が遅れている。
ブルキナファソ、首都ワガドゥグ、トラオレ大尉を支持する集会(Getty Images)

西アフリカのサヘル地域では、マリ、ブルキナファソ、ニジェールの3カ国がここ数年の軍事クーデター後に西側諸国から距離を置き、ロシアとの関係を強化している。この動きを受け、米国は3軍政との対話を模索し、地域の安定確保とテロ対策の協力を模索している。

マリ、ブルキナ、ニジェールでは2020年代に軍事クーデターが相次いで発生し、民政復帰が遅れている。3国はその後、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)など伝統的な地域共同体や旧宗主国フランス、欧米諸国との関係を縮小または断絶し、自国の軍事・安全保障体制を再構築してきた。とりわけサヘルにおける過激派組織の台頭と治安悪化が軍政を支持する一因となった背景がある。

こうした中、3国の軍政はロシアとの接点を強めている。2023年以降、ロシアは軍事顧問や訓練部隊、軍事機材の提供を通じて支援を打ち出し、3国は「サヘル諸国連合(AES)」を立ち上げ、連携を進めてきた。ロシア側は5000人規模の軍事支援を提供し、装備や訓練の提供を通じて安全保障協力を強化している。

軍政側がロシアを選択する背景にはフランスや欧米諸国への不満がある。旧宗主国フランスはかつてサヘルで大規模な軍事展開を行っていたが、反発が強まり撤退を余儀なくされ、在外フランス軍との摩擦は両者の関係悪化を象徴している。また、ニジェール軍政は米国との安全保障協力協定を破棄し、米軍基地の存在や兵力展開に対して批判的な立場を取った。

これに対し米国は、軍政との距離を置きつつも対話の必要性を強調している。米政府は直接交渉を通じて「ロシア一辺倒」の状況を是正し、サヘル地域における治安協力やテロ対策で協調することを模索しているとの観測がある。米当局者は現時点で民主主義回復への道筋を重視しつつも、地域の安全保障環境を改善することが優先されるべきだとの認識を示しているという。

この米国の姿勢は従来の対西アフリカ政策からの微妙な転換を示しているとの指摘もある。従来、欧米諸国はクーデター後の政権に対して民主主義への移行を条件とした制裁や支援停止を打ち出してきたが、軍政が地域の治安悪化と暴力の拡大に直面する中で、現実的な協力の枠組みを模索し始めているという分析もある。

一方で、ロシアの影響力拡大への懸念は根強い。ロシア側との軍事協力が地域の治安改善にどこまで寄与するかは不透明であり、治安維持を名目にした兵士や傭兵の派遣が、逆に人権侵害や暴力の激化を招くとの懸念も国際社会で指摘されている。

専門家は西アフリカにおける米露の競合について、冷戦後の地政学的な再編の一環として位置づけられると分析している。地域の軍政がどの程度西側やロシアとのバランスを取れるかは、サヘル全体の安定と長期的な民主主義の回復にとって重要な鍵となる。

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