東南アジアのオンライン詐欺産業、摘発進むも撲滅困難
これらの詐欺センターの多くは東南アジア各国、とりわけカンボジアとミャンマーを中心に点在しており、国連や人権団体の報告ではミャンマーで約12万人、カンボジアでも約10万人が強制的に詐欺に従事させられているという。
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東南アジアを拠点とする大規模なオンライン詐欺産業は、国際的な取り締まりや摘発にもかかわらず依然として根強く、撲滅が困難な状況が続いている。その背景には、組織構造の巧妙さや地域の政治的・経済的な実態、労働力の搾取構造といった複数の要因が重なっている。
2025年10月、ミャンマー軍がタイ国境近くの巨大詐欺拠点「KKパーク」を急襲し、摘発を行ったものの、他の詐欺センターでは依然として「詐欺業務」が継続されている。被害者として世界各地から連れて来られた労働者の救出は進んでいるものの、数百にも及ぶ詐欺センターは簡単に場所を変えて稼働を続けているという。
これらの詐欺センターの多くは東南アジア各国、とりわけカンボジアとミャンマーを中心に点在しており、国連や人権団体の報告ではミャンマーで約12万人、カンボジアでも約10万人が強制的に詐欺に従事させられているという。これらの労働者の中には、就労を求めて自ら来た者もいるが、多くは誤った情報や高収入の誘いを信じて来た後にパスポートを没収され、逃げられない状態に置かれている。
詐欺の手口は多岐にわたり、「投資詐欺」や「ロマンス詐欺」「タスク詐欺」など多様な形態で被害者を誘い込む。最初は少額を返金するなどして信用させ、徐々に金額を増やしていくやり方が代表的である。また、詐欺を行う労働者は1日12~16時間にも及ぶ長時間労働を強いられるケースもあり、逃亡を防ぐために厳しく監視されるなど人権侵害の側面も指摘される。
この詐欺産業はオンラインカジノや違法ギャンブルのインフラを転用して成長してきた歴史がある。パンデミックで客足が途絶えたカジノ運営者や関係企業が、インフラや労働力を利用してオンライン詐欺にシフトしたことが発端の一つだという指摘もある。詐欺センターの多くは宿泊施設や食堂、娯楽設備を備えた複合施設の形を取っており、一つの敷地内で複数の詐欺会社が並行して運営されることもある。
国際的な取り締まりは徐々に強化されており、カンボジア当局は最近、詐欺ネットワークの首謀者として疑われる大物実業家を逮捕後、中国へ送還した。また、米国やイギリスなど複数国が資産凍結や制裁措置を講じている。しかし、詐欺センターの根絶には至っておらず、指導的立場にある人物の逮捕例はまだ例外的だと専門家は分析する。首謀者の摘発が進まない限り、新たな詐欺ネットワークが生まれ続ける恐れがある。
このため人権団体や国際機関は、「単に被害者を救出するだけでなく、詐欺ネットワークの背後にある組織や資金源を解体する必要がある」と声を上げている。詐欺産業の撲滅に向けては、関係国間の協力や情報共有の強化、被害者保護策の整備といった包括的な対策が不可欠であるとの指摘が強まっている。
