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ベトナム共産党、トー・ラム党書記長の再任を全会一致で承認

トー・ラム氏は公安・治安分野出身の経歴を持ち、2016年から公共安全省の長官として反腐敗キャンペーンを主導してきた。
2026年1月23日/ベトナム、首都ハノイ、トー・ラム党書記長(AP通信)

ベトナム共産党は23日、首都ハノイで開かれた全国党大会の最終日にトー・ラム(To Lam)党書記長の続投を全会一致で承認した。同氏は国家主席の兼任も視野に入れているとの観測も広がり、同国の伝統的な集団指導体制からの大きな転換点となる可能性を示している。

トー・ラム氏は公安・治安分野出身の経歴を持ち、2016年から公共安全省の長官として反腐敗キャンペーンを主導してきた。その過程で複数の高官が失脚し、党内の勢力図が大きく書き換えられた。今回の党大会で選出された19人の党中央政治局メンバーの構成は同氏の影響力を反映しており、専門家は党内の抑制機構が弱まる可能性を指摘している。

党大会ではベトナムが2045年までに高所得国となるという長期目標に向け、2026年から2030年にかけて年率10%以上の経済成長を達成するという極めて野心的な目標も掲げられ、トー・ラム氏もこれを重視する方針を示した。またトー・ラム氏は「二桁成長を達成し、設定された目標を実現しなければならない」と述べ、成長戦略に私企業の強化や技術革新の促進が不可欠であるとの見解を示した。

ベトナムはこれまで、安価な労働力と輸出主導型の成長モデルを武器に急速な経済発展を遂げてきたが、これからは生産性や技術に基づく発展へと転換する必要があると強調されている。具体的には民間セクターの役割を大きくし、IT・デジタル産業や高付加価値製造業への投資を拡大するとともに、国際貿易や資本の取り込みを進める戦略だ。

しかし、この成長目標には多くの困難も内在する。2025年の経済成長率は8%と堅調だったものの、世界銀行など国際機関は2026年の成長率を6%台前半と予測し、外部環境の厳しさを示している。また高齢化や気候変動リスク、制度的な弱さといった構造的課題も指摘されている。さらに、米国などとの貿易摩擦やサプライチェーンの地政学的な不確実性も成長へのリスク要因だ。

トー・ラム氏は再選後、 官僚機構の改革やインフラ整備の加速を通じて市場の効率性を高める意向を示したが、保守派からは共産主義の基本原則が損なわれるのではないかとの懸念も根強い。特に民間企業への影響力拡大と安全保障機能の強化が組み合わさる中で、党内のバランスや人権状況に対する批判も国際的に高まる可能性がある。

外交面では中国との関係強化が象徴的な動きとして注目され、習近平(Xi Jinping)国家主席からの祝電も届いた。中国はベトナムにとって最大の貿易相手国であると同時に、南シナ海をめぐる緊張も抱える複雑なパートナーだが、指導者同士の連携は域内政策にも影響を与える見込みだ。

トー・ラム氏の再選は政治的安定と経済改革の加速という評価と同時に、党内の権力集中や統制強化への懸念という二つの側面を併せ持って受け止められている。ベトナムが掲げる高成長目標を実現するための政策運営と、その過程での政治・社会面の調整が今後の焦点となる。

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