タイ・カンボジア武力衝突、トランプ和平破綻寸前
両国の国境付近で再び地上戦が始まり、タイはカンボジア側の拠点を空爆したと発表。どちらが先に発砲したかは不明だが、停戦後では最も激しい戦闘となった。
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12月8日、タイとカンボジアの間で再び激しい武力衝突が起きた。両国は2か月前、トランプ(Donald Trump)米大統領の仲介による停戦合意に調印したものの、和平は脆弱なままだった。
この日、両国の国境付近で再び地上戦が始まり、タイはカンボジア側の拠点を空爆したと発表。どちらが先に発砲したかは不明だが、停戦後では最も激しい戦闘となった。
この対立の根底には、両国が長年抱えてきた領土問題がある。問題の起源は1907年に当時フランス領だったカンボジアを基に作成された古い地図にあり、タイ政府はこの地図による国境線が不正確だと主張している。
さらに、1962年に国際司法裁判所(ICJ)が当該地域の主権をカンボジアに認める判決を下し、2013年にもその判決が再確認された。しかしタイ国内にはこの決定に反発する声が根強く、過去にも2008〜2011年の間、複数回の衝突が起きていた。
今年7月、両国は数日間にわたる激しい戦闘を経て停戦に至っていた。その際には多くの民間人・兵士が犠牲となり、数万人が避難を余儀なくされた。
両国は停戦後も重火器や部隊を国境付近に配置し続け、緊張状態は解消されていなかった。
今回の衝突によって、国境地帯に住む住民の生活は再び混乱に陥る可能性がある。観光、貿易といった両国経済にとって重要な分野にも大きな悪影響が懸念される。特に、和平合意の信頼は著しく低下し、外交的な緊張も再燃している。
加えて、この国境紛争は単なる領土問題にとどまらず、歴史的、文化的な対立も背景として根強い。両国は古代からの帝国時代などを通じ、文化や歴史の継承を巡って競争意識を持ってきた経緯がある。このため、両国間の不信感は単純な国境画定問題以上の深層を含んでいる。
停戦合意というかろうじて確保されていた平和は破綻し、両国は再び武力に頼る構えを見せている。今後、この紛争がどのように展開し、地域の安全保障や人道状況、国際関係にどのような影響を及ぼすかは予断を許さない。
