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タイ国境で地雷爆発、カンボジアとの「停戦協定」履行を停止

両国は先月、マレーシアで開催されたASEANサミットで停戦協定に署名した。
2025年8月2日/タイとカンボジアの国境付近、カンボジア軍の攻撃を受けた建物前(AP通信)

タイ政府は10日、米国が仲介したカンボジアとの停戦協定の履行を停止すると発表した。

タイ陸軍によると、カンボジア国境付近で9日、地雷が爆発し、兵士2人が重傷を負ったという。

チャーンウィーラクン(Anutin Charnvirakul)首相は声明で、「この事件は国家安全保障に対する敵意が、我々が考えていたほど減少していなかったことを示している」と述べた。

両国は先月、マレーシアで開催されたASEANサミットで停戦協定に署名した。

両国は7月、国境沿いで5日間に渡って衝突。空爆・砲撃の応酬となり、30人以上が死亡、26万人以上が避難を余儀なくされた。

両国はその後、マレーシアなどの仲介で無条件の停戦に合意。7月29日に発効した。

しかし、その後も緊張はくすぶり続け、衝突の前後を含め、地雷爆発が相次いでいる。8月には国境地帯をパトロール中のタイ兵士3人が負傷する事件も発生した。

チャーンウィーラクン氏は9日の事件を受け、「タイ側の要求が満たされるまで、停戦協定の履行を停止する」と強調した。

チャーンウィーラクン氏はタイ側の要求について詳しく説明せず、カンボジア政府もコメントを出していない。

合意に基づき、タイは拘束中のカンボジア兵士18人を解放。双方は国境地帯から重火器を撤去し、地雷の除去を開始することになっている。

タイとカンボジアの間で緊張が高まる「国境係争地」の問題は歴史的経緯、民族感情、そして政治的思惑が複雑に絡み合っている。

特に象徴的なのが、カンボジア北部プレアビヒア寺院(Preah Vihear Temple)周辺の領有権をめぐる対立である。

この寺院は11世紀にクメール王朝によって建立されたヒンズー教の聖地であり、文化的にも歴史的にも大きな価値を持つ。

寺院自体はカンボジア領内に位置すると国際司法裁判所(ICJ)が1962年に判断したが、その周辺の丘陵地や出入り口にあたる土地については明確な画定がなされず、両国の国境線の解釈をめぐって緊張が続いてきた。

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