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タイ政府が議会解散、来年早々に総選挙へ、カンボジアとの国境衝突続く中

選挙は官報公布から45〜60日以内に実施される見込みで、来年1月末から2月初めにかけて行われる見通しとなった。
2025年12月12日/タイ、首都バンコク、チャーンウィーラクン首相(AP通信)

タイ政府は12日、下院にあたる国民議会(定数500)を解散し、来年初めに総選挙を実施すると発表した。チャーンウィーラクン(Anutin Charnvirakul)首は前日、自身のフェイスブックで「国民に権力を返したい」と投稿し、解散の意向を示していた。

12日付の王室官報で国王が解散を承認した。選挙は官報公布から45〜60日以内に実施される見込みで、来年1月末から2月初めにかけて行われる見通しとなった。

チャーンウィーラクン氏は就任から約3か月で解散に踏み切った。同氏は今年9月、少数連立政権を発足させたが、議会内で最大野党・人民党との対立が深刻化していた。

人民党は政権支持の条件として憲法改正や憲法制定議会の設置に関する国民投票の実施を求め、これが実現しなかったことから不信任案の提出を示唆していた。この政局の行き詰まりを受け、チャーンウィーラクン氏は議会運営が困難な状況だとして解散を選択したと説明している。

今回の解散はタイが現在直面している国内外の複数の危機と重なっている。国内では政治的不安定が続く一方、隣国カンボジアとの国境地域では国軍同士の衝突が激化し、複数の戦闘が発生。これまでの報道では数十人の死者、数百人の負傷者が出ており、数十万人が避難を余儀なくされている。

この国境紛争は長年の領土問題が背景にあり、現在の軍事的緊張が政治判断にも影響を及ぼしているとの分析もある。

タイ憲法の規定により、解散後の選挙実施までの期間、チャーンウィーラクン氏は暫定政権として限られた権限の下で政務を継続する。ただし、予算案の承認など重要な立法行為は行えないため、政府運営には制約がある。また暫定政権は国防や治安対応に関しては引き続き機能するとされているが、政治の空白や政策決定の停滞が懸念されている。

選挙に向けては各政党が準備を進めており、国民の支持を巡る動きが活発化している。特に人民党は若年層や都市部で人気が高く、改革派として勢力を伸ばしている。一方、保守系や既存の政治勢力も影響力の維持を図るため、選挙戦略の調整を進めている。選挙結果次第では新たな連立交渉や政策方針の転換が避けられないという見方もある。

政治専門家の間では、今回の解散がタイ国内の政治安定につながるかどうかについて意見が分かれている。支持派は「国民の信を問う適切な機会」と評価する一方、批判的な立場からは「政治と安全保障の両面で不確実性を増す可能性がある」との指摘もある。解散総選挙は国内経済や国際関係にも影響を与える可能性があり、今後の動向が注目される。

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