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タイ軍、カンボジアの軍事目標を空爆「相手が先に発砲」

カンボジア国防省は「タイ側が先に空爆を仕掛けた」と反論。両国ともに相手の先制攻撃を非難している。カンボジア側は「報復は行っていない」と説明している。
2025年12月7日/タイ、シーサケット県、カンボジア国境沿いで負傷した兵士を運ぶ当局者たち(AP通信)

タイ政府は8日、隣国カンボジアとの国境地帯で空爆を実施したと発表した。これにより、再び両国間の緊張が激化した。

タイ陸軍の報道官によると、今回の空爆はカンボジア軍部隊による「複数地域からの発砲」に対処するもの。タイ兵士1人が死亡、他に4人が負傷したと明かした。国境付近で暮らす多くの市民が避難を余儀なくされた。

一方、カンボジア国防省は「タイ側が先に空爆を仕掛けた」と反論。両国ともに相手の先制攻撃を非難している。カンボジア側は「報復は行っていない」と説明している。

両国の首脳は10月のASEANサミットで停戦協定に署名した。

しかし、両国はその後も停戦履行を巡って対立。タイ国境沿いの地域では先月、タイ軍兵士がカンボジア側に向けて発砲し、民間人1人が死亡、3人が負傷した。その前には地雷が爆発し、タイ軍兵士2人が重傷を負っている。

両国は7月、国境沿いで5日間に渡って衝突。空爆・砲撃の応酬となり、30人以上が死亡、26万人以上が避難を余儀なくされた。

両国はその後、米国やマレーシアなどの仲介で無条件の停戦に合意。7月29日に発効した。

しかし、その後も緊張はくすぶり続け、衝突の前後を含め、地雷爆発が相次いでいる。8月には国境地帯をパトロール中のタイ兵士3人が負傷する事件も発生した。

タイ軍は今回の空爆の標的について、国境地域にある「軍事目標」と説明している。

この空爆によって、国境付近では避難と混乱が起きており、地域の安全保障だけでなく、市民生活にも大きな影響が出ている。今後の情勢や両国の対応が国際的に注目される。

今回の事態は両国の間にある長年の領有権争いや国境画定問題が根底にある。7月の戦闘、それに続く停戦合意、そしてわずか数か月後の再衝突。この流れは両国関係の不安定さを改めて浮き彫りにしている。

今後、政府間の外交、地域の安定、さらには国際社会の介入や調停の可能性が問われることになるだろう。

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