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タイ・カンボジア紛争激化、国境付近で戦闘続く

タイ軍は12月18日、F16戦闘機がカンボジア北西部でロケット弾を保管していた倉庫を空爆したと発表した。
2025年12月16日/カンボジアとタイの国境近く、タイ軍の空爆を受けたとされる地区(AP通信)

タイとカンボジアの軍事衝突が激化しており、タイ軍がカンボジア側への空爆を継続している。タイ軍は12月18日、F16戦闘機がカンボジア北西部でロケット弾を保管していた倉庫を空爆したと発表した。これに対しカンボジア政府はタイ側による爆撃は民間地域にも及んでおり、国際法違反だとして強く非難している。

両国は12月8日の小競り合いをきっかけに攻撃を再開。この小競り合いではタイ兵士2人が負傷し、それ以降タイ軍が空爆や地上攻撃を仕掛け、カンボジア軍は中距離ロケット弾を発射するなど、数十年にわたる領土紛争が激しさを増している。両国は互いに領有権を主張する国境の複数地域で争っており、古代寺院跡がある係争地も被害を受けている。

カンボジア政府報道官は18日、タイ機が国境の町ポイペトの住宅地に3発の爆弾を投下し、倉庫の一部を破壊したと述べたほか、別の地域でも2回目の爆撃があったと明らかにした。これにより民間人が軽傷を負ったとされる。

タイ国防省は軍事目的で使用されていたロケット弾保管施設を標的にしたものであり、民間人への被害を避けるため最大限の配慮を行ったと説明している。市民の多くは戦闘地域から避難している。

これまでの戦闘で、タイ側はこれまでに少なくとも21人の兵士が死亡したとされる。また、タイ政府は戦闘関連の混乱や避難中のストレスなどにより、直接的な戦闘以外でも民間人20人が死亡したと報告した。一方、カンボジア内務省は12月8日以降、少なくとも18人の民間人が死亡し、79人が負傷したと公表しているが、軍の死傷者数は明らかにしていない。

衝突は双方が相手側の先制攻撃を非難し合う形で拡大しており、双方とも自国の領土を守るために行動していると主張している。国境地帯では数十万人規模の住民が避難を余儀なくされ、避難所での生活を強いられている。

この衝突は7月にマレーシアが仲介した停戦合意が破綻した後に再燃したもので、トランプ米政権の働きかけで10月に再確認されたはずの停戦も実効性を欠いている。タイのチャーンウィーラクン(Anutin Charnvirakul)首相はトランプ(Donald Trump)米大統領が発表した停戦再開を否定し、軍事行動を続ける意向を示している。両国は国際社会から停戦と対話による解決を求められているが、戦闘は収まる気配を見せていない。

国際社会では、マレーシアや中国政府などが仲介努力を続けており、両国に対話再開を促している。だが、タイとカンボジアの領土をめぐる歴史的な争いは根深く、即時の衝突終結は困難との見方が出ている。

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