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タイ軍がカンボジア国境の「巨大詐欺拠点」を公開、調査進む


問題の施設はカンボジア北部国境沿いにあるリゾート複合施設で、敷地面積は約80ヘクタール、東京ドーム約17個に相当する広大なものだ。
2026年4月7日/カンボジア、タイ国境付近のオンライン詐欺拠点(AP通信)

タイとカンボジアの国境地帯に位置する巨大施設で、世界各国の人々を標的とする大規模なオンライン詐欺が行われていた実態が明らかになった。現地を掌握したタイ軍が7日に公開したこの施設は、最大で約1万人が働いていたとされる「詐欺工場」であり、その規模と組織性は東南アジアに広がる犯罪ネットワークの実態を象徴するものとなっている。

問題の施設はカンボジア北部国境沿いにあるリゾート複合施設で、敷地面積は約80ヘクタール、東京ドーム約17個に相当する広大なものだ。内部には157棟の建物があり、そのうち少なくとも29棟が詐欺拠点として使われていたほか、大規模な宿舎や高級ヴィラ、飲食施設なども併設されていた。

この施設は2025年末の国境紛争を受けてタイ軍が制圧したもので、現在は軍の管理下に置かれている。現地では工事が進行中の痕跡も確認され、活動が拡大途上にあった可能性も指摘されている。

報道陣が立ち入った建物内部には、詐欺の手口を示す詳細な資料が多数残されていた。机の上には中国語で書かれたマニュアルや脚本、スマートフォン用のSIMカードなどが散乱し、組織的かつ計画的に詐欺が行われていたことがうかがえる。中には、架空の人物設定を数十ページにわたって作り込んだ資料もあり、被害者との信頼関係を築くための緻密なシナリオが用意されていた。

こうした詐欺は主にインターネットやSNSを通じて行われ、恋愛感情や投資話を利用して金銭をだまし取る手口が中心だ。米連邦捜査局(FBI)の統計によると、2025年だけで米国人の被害額は約210億ドルに達し、国際的な社会問題となっている。

施設内には中国料理店など複数の飲食店もあり、労働者が長期間滞在することを前提とした「自給自足型」の環境が整えられていた。こうした構造は単なる犯罪拠点というよりも、一種の都市のような機能を備えていたことを示している。

一方で、このような施設で働く人々の中には、だまされて連れてこられた人身売買の被害者も多い。国連の推計では、東南アジア全体で約30万人が同様の詐欺に従事させられている可能性があり、深刻な人権問題としても国際的な関心を集めている。

今回の施設はカンボジアの有力政治家が所有していたとされ、米国の制裁対象となっている人物との関連も指摘されている。ただし、施設の全てが同人物の所有かどうかは明確になっていない。

タイとカンボジア両政府はこうした詐欺拠点の取り締まりを強化する方針を示しているが、その活動は国境をまたいで広がり、一国だけでの対応には限界がある。タイ軍の報道官は7日、「この問題は世界的な協力なしには解決できない」と述べ、各国の連携の必要性を強調した。

東南アジアではコロナ禍以降、こうしたオンライン詐欺拠点が急増し、取り締まりが強化されても別の地域へ移動するなど、いたちごっこが続いている。今回明らかになった巨大施設の実態はデジタル時代における越境犯罪の新たな脅威を浮き彫りにするとともに、その背後にある組織的搾取と国際的な対応の遅れを示すものとなっている。

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