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武装勢力が軍施設を急襲、銃撃戦に、兵士4人死亡、15人負傷 パキスタン

攻撃は北ワジリスタン郊外の集落に近い軍の哨戒所で起き、治安情勢への懸念が改めて浮き彫りとなった。
パキスタン、北西部カイバル・パクトゥンクワ州、北ワジリスタン郊外(Getty Images)

パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州の北ワジリスタン地区で19日、武装勢力が軍施設を急襲し、軍兵士4人が死亡、少なくとも15人の民間人が負傷した。当局が明らかにした。

攻撃は北ワジリスタン郊外の集落に近い軍の哨戒所で起き、治安情勢への懸念が改めて浮き彫りとなった。

軍によると、武装勢力はまず自爆爆弾を使って哨戒所の外壁を破壊、少なくとも3人の戦闘員が銃を持って攻撃を仕掛けてきたという。これに対し軍は約1時間にわたって応戦し、襲撃者全員を射殺したとしている。負傷した民間人には女性や子供も含まれており、爆発の衝撃で近隣の民家やモスクにも被害が出たという。

北ワジリスタン地区はかつて同国最大のイスラム過激派TTP(パキスタンのタリバン運動)やその他過激派の拠点となった地域で、国境を接するアフガニスタン側からの侵入や攻撃が絶えず懸念されてきた。

パキスタン軍は今回の襲撃について、計画や指揮がアフガン領内からなされた疑いがあるとして、アフガンのタリバン暫定政権に対し、武装勢力の排除を求める抗議を行ったと明らかにした。アフガン側はコメントを出していない。

パキスタン軍は声明で、「われわれは武装集団によるいかなる侵攻も断固として阻止する」と強調。必要に応じて追撃やテロ対策を継続する姿勢を示した。またパキスタン外務省も、首都イスラマバードに駐在するアフガン特使を呼び出し、領内からのテロ活動支援に対する「深刻な懸念」を伝えたと明らかにした。

近年、パキスタン北西部ではTTPを中心とする過激派による攻撃が激しさを増しており、軍や警察、民間人を標的とした自爆攻撃や銃撃戦が頻発している。

これらの攻撃はアフガン情勢の不安定化と関連しているとの指摘があり、タリバン暫定政権が自国内の武装勢力の動きを十分に抑えられていないとの批判がパキスタン側から出されている。

今回の襲撃によって再び注目されるのは、パキスタン政府のテロ対策の在り方と地域の安全保障環境の不安定さである。軍事作戦で一定の成功を収めてきたとされる一方で、過激派の台頭を許しているとの批判もある。また、民間人の被害が出ていることから、治安部隊の防護策や地域住民の安全確保の重要性が改めて問われている。

パキスタン政府はこれまでにも、国内の暴力を抑制するためアフガン側との協力を求めてきたが、国境地帯における暴力の根絶には至っていない。国際社会もこの地域の治安状況を注視しており、今後の動向が注目される。

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