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スリランカ、主要高速道路プロジェクトを再開

スリランカは2022年に外貨不足から外債の返済が不能となり、独立以来初めてのデフォルトに陥った。
スリランカ、首都コロンボの駅(Getty Images)

インド洋の島国スリランカは17日、中国から新たに5億ドルの融資を受け、中断していた高速道路プロジェクトを再開した。

首都コロンボと中央高地のキャンディ市を結ぶ高速道路(区間38キロ)の建設工事は2016年に着工したが、同国史上最悪の金融危機の余波で資金と建設資材が枯渇したため、23年に中断していた。

この高速道路は同国の二大都市間を結び、経済活動を活性化すると期待されている。政府によると、工事中断時点で約3分の1が完成していた。

ディサナヤケ(Anura Kumara Dissanayake)大統領は声明で、「政府は現在、2028年4月までにこの高速道路プロジェクトを完成させることを目指している」と述べた。

またディサナヤケ氏は「中国輸出入銀行からの5億ドルの融資は優遇条件で提供された」と明らかにした。

スリランカは2022年に外貨不足から外債の返済が不能となり、独立以来初めてのデフォルトに陥った。燃料や食料、医薬品などの必需品の輸入が滞り、市民生活に大きな混乱が生じたことから、国際通貨基金(IMF)や主要債権国との協議を通じて債務再編を進める必要に迫られた。2023年以降、この債務再編はスリランカ経済の再建に向けた中心課題となり、国内外で大きな注目を集めている。

2023年3月、IMFはスリランカに対して約29億ドル規模の支援を認め、分割融資の枠組みである拡張信用供与(EFF)を承認した。ただしこの支援は、債務持続可能性の確保が条件とされ、公式債権者や民間債権者との再編交渉の進展が必須となった。そのため、スリランカ政府は債務総額の整理、返済スケジュールの再設定、利子負担の軽減を軸に各方面と交渉を重ねることになった。

まず二国間債務については日本やインド、フランスが中心となり「公式債権者委員会(OCC)」が設置された。2023年から交渉が始まり、2024年6月にはOCCおよび中国輸出入銀行との間で合意が成立した。この合意では返済開始を数年後に繰り延べ、最長で2040年代まで償還期間を延長する枠組みが導入された。加えて利率も大幅に引き下げられ、日本との契約では年利が1%未満に抑えられるなど、スリランカにとって実質的な負担軽減となった。

国際金融市場から調達したソブリン債(国際国債、ISB)についても再編が進められた。総額約125億ドルにのぼるこれらの債券は、当初の利率や償還条件が厳しく、デフォルトによって債権者側も大きなリスクを抱えていた。2024年には債権者グループとの間で合意に達し、元本の約3割に相当する削減や利払い条件の変更、返済期限の延長が取り入れられた。この「ヘアカット」によって財政圧力は大きく和らぎ、国際的な信用回復の兆しが見え始めた。

一方で、国内債務の再編も課題となった。政府債務の多くは年金基金や中央銀行が保有しており、利払い負担を軽減するために満期延長や利率の固定化が検討された。ただし、国内金融機関への影響が深刻になりかねないため慎重な調整が必要であった。最終的には、銀行部門の安定を重視しつつ、年金基金保有債券を中心に条件変更を行う形で折り合いをつけた。

この過程で重要だったのは、債権者間の「公平性」である。とりわけ中国が独自に支援を行うのではないかとの懸念があったが、OCCとの合意に中国輸出入銀行も加わったことで、全体として調和のとれた再編枠組みが整えられた。IMFもこれを評価し、2025年までに第3次・第4次のレビューを完了させ、追加融資を実行した。こうしてスリランカの債務再編は「ほぼ完了」に近づいたと見なされている。

ただし課題は依然として多い。まず、再編で合意した条件は返済の先送りであり、恒久的な免除ではない。2028年以降に本格的な支払いが再開されれば、再び外貨不足に直面する可能性がある。さらに、緊縮財政や増税は国民生活に負担を与え、社会的不満を高めている。IMFが求める改革、特に税制強化や国有企業の効率化は政治的に抵抗が大きく、完全な履行には不透明感が残る。

また、スリランカ経済の回復には観光業の復調や輸出拡大が不可欠である。2023年以降、観光収入や出稼ぎ労働者からの送金は回復傾向を示しているが、世界経済の変動や地政学的リスクが収入源を再び圧迫する可能性も否定できない。外部ショックに弱い構造を抱えたままでは、再編後の持続可能性も脆弱である。

総じて言えば、スリランカの債務再編は大きな一歩を踏み出したものの、経済再建の道筋はまだ確立していない。債務負担を一時的に軽減することには成功したが、今後は財政基盤の強化、透明性の高いガバナンス、持続的な成長戦略の構築が不可欠である。再編が真に成功と呼べるかどうかは、合意内容を着実に実行しつつ、国民生活と経済成長を両立させられるかにかかっている。

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