◎警察は声明で、負傷者2人を含む9人を逮捕したと発表した。
スリランカ軍は22日、大統領府近くに設置されたデモ隊のキャンプ場を急襲し、テントを解体した。
現地メディアによると、重武装した数百人の兵士と警察の部隊は22日未明、大統領府近くで野営していたデモ隊キャンプを取り締まり、数人を逮捕したという。
英BBCニュースのジャーナリストは兵士に殴られ、携帯電話を奪われ、映像を削除されたと伝えている。
警察は声明で、負傷者2人を含む9人を逮捕したと発表した。
シンガポールに逃亡したラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)前大統領の後任に選ばれたウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)新大統領はデモ隊に厳しい措置を取ると示唆していた。
デモ隊はラジャパクサ氏だけでなくウィクラマシンハ氏の辞任も要求しているため、混乱はしばらく続くと予想されている。
スリランカは現在、隣国インドの信用枠で何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。
国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。
国民は調理用ガス、ガソリン、食料、その他日用品の入手に苦労しており、その影響は貧困層から中産階級に拡大。世界に衝撃を与えた。
ウィクラマシンハ氏は20日に宣誓し、野党と国民に団結を呼びかけたが、一部のデモ隊は代わりに大統領府前で「ラニル、帰れ!」と叫んだ。
現地メディアによると、先週大統領公邸などを占領したデモ参加者の多くが撤退したように見えるという。大統領府近くのキャンプ場に残っていた市民は数百人と伝えられている。
多くのデモ参加者がラジャパクサ氏とつながりの深いウィクラマシンハ氏に不信感を抱きつつも、「チャンスを与える」と表明している。
ウィクラマシンハ氏は就任演説の中で、「政府を力で倒そうとしたり、政府庁舎を占領したりする試みは法に反しており、容認できない」と述べていた。
軍と警察の合同部隊は22日未明、キャンプ場に突入し、大統領府の施設と敷地を取り戻した。デモ隊は近いうちに施設を返還すると約束していたが、時期は明らかにしていなかった。
警察はこの取り締まりについて、「大統領府の支配権を取り戻す特別作戦」と説明した。
BBCを含む多くのメディアが暴力を目撃したと報じているが、警察は法に基づいて適切に取り締まったと主張している。
AP通信によると、軍と警察は現地時間午前1時頃に取り締まりを開始し、付近の道路も完全に封鎖したという。
スリランカの弁護士会は声明で、「過剰な暴力はスリランカの印象をひどく損ね、危機解決に向けた取り組みにも影響を与える可能性がある」と警告した。
市民団体や活動家も以前からデモ隊に対する暴力を批判していた。
首都コロンボの英国大使館も取り締まりが暴力的になったという情報に懸念を表明した。
デモ隊はラジャパクサ政権の「後先考えない無謀な減税」「外貨を獲得できない無駄な施設への投資」「意味不明な政策」などで債務が膨れ上がり、「中国の債務トラップ」と「コロナの感染拡大に伴う観光業の衰退」がとどめとなり、債務不履行に陥ったと非難している。
スリランカは現在、非常事態宣言下にあり、軍や警察は令状なしで市民を逮捕・拘束できる権限を与えられている。