◎スリランカは国債の利払いに苦労している。
スリランカの大統領は5日、物議を醸している非常事態宣言を解除すると発表した。
ラージャパクサ大統領は先月末、豪華な私邸の近くで激しい抗議デモが行われたことを受け、4月1日に非常事態を宣言し、警察と政府の権限を強化した。
しかし、宣言は国民の怒りに油を注ぎ、首都コロンボのデモを全国展開させることになった。
ラージャパクサ大統領は5日の声明で非常事態宣言を解除すると発表し、デモ隊に自制を求めた。
スリランカは外貨を獲得できないプロジェクトに数十億ドルを費やしたことなどによる過去に類を見ない経済危機に悩まされている。同国は今年、対外債務を70億ドル近く処理する予定だが、外貨準備は3月中頃時点で4億ドルを下回った。
外貨不足で日用品の輸入代金を支払えなくなった結果、食料、医薬品、灯油、ありとあらゆる物資が不足し、インフレを加速させた。電力会社は火力発電に必要な燃料を確保できず、停電が常態化(最大1日13時間)している。
ここ数日、全国各地で数万人が道路に繰り出し、政府の指導力不足と不作為を非難し、ラージャパクサ大統領の辞任を要求した。
国民の怒りは政権にも影響を与えている。
閣僚は3日、ラージャパクサ大統領の兄弟であるマヒンダ・ラージャパクサ首相を除いて、一斉に辞任した。
大統領はその後、野党に「挙国一致内閣を発足させよう」と提案したが、拒否された。
野党のプレマダサ党首は5日の声明で、「国民はラージャパクサ大統領と政府の総辞職を求めている」と述べた。
また与党と連立を組む党の議員少なくとも41人が連立を離脱すると発表し、政府はさらに弱体化した。地元メディアによると、公式の離脱手続きが行われたかどうかは分からないという。
抗議デモは6日も続くと予想されている。
地元メディアが4日に放送した映像には、デモ隊が与党議員の事務所や自宅に押し入り、建物を破壊する様子が映っていた。議会議長は5日、議員らに身の安全を確保するよう要請した。
首都コロンボのデモに参加した男性はAP通信の取材に対し、「米、灯油、調理用ガス、粉ミルク、その他の基本的な日用品がどこにもない」と語った。
地元メディアによると、一部のバス区間は燃料を確保できないという理由で運休になったという。
ほとんどの抗議デモは平和的に行われているが、一部の暴徒は警察に石を投げ、車両に火を放ち、政治家の自宅を襲撃し、民間企業に押し入り略奪したりしている。
国連人権理事会は5日、緊急事態宣言が解除される前に出した声明で、スリランカの緊張が高まっていることに懸念を表明した。
理事会は声明の中で警察がデモ隊に暴力を振るったという報告を引用し、「非常事態宣言は平和的なデモの権利を侵害したり、思いとどまらせたりする可能性がある」と指摘した。
ラージャパクサ大統領は先月、国際通貨基金(IMF)やその他の機関と融資について協議し、さらに、中国とインドに融資を要請していると明らかにしたが、外貨不足によるデフォルトを回避できるかどうかは不透明な情勢である。