◎デモ隊は13日、厳戒警備の首相府に突撃し、機動隊と衝突した。
2022年7月13日/スリランカ、首都コロンボの首相府(Eranga Jayawardena/AP通信)

スリランカウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)首相は13日、デモ隊が首都コロンボの首相府を制圧したことを受け、軍に秩序を回復するよう命じた。

ウィクラマシンハ氏はラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領の国外逃亡でスリランカの指導者に強制就任させられた。

主要メディアによると、ラジャパクサ氏は逃亡先のモルディブから第三国に出国する可能性が高いという。

デモ隊はラジャパクサ氏が退陣するまでデモを続けるとしていたが、要求をアップグレードし、ウィクラマシンハ氏に速やかに辞任するよう求めている。

スリランカの憲法によると、現職の大統領は免責特権を与えられている。ラジャパクサ氏は新政権発足後、逮捕されると考え、逃亡したとみられる。

スリランカは現在、隣国インドの信用枠で何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。

国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。

多くの市民がラジャパクサ政権の失策を非難し、5月に首相に就任したばかりのウィクラマシンハ氏にも責任があると主張している。

デモ隊は13日、厳戒警備の首相府に突撃し、機動隊と衝突した。機動隊は催涙ガス弾で群衆を追い払おうとしたが、勢いに屈した。

大統領公邸で英気を養ったデモ隊は首相府のソファに寝っ転がり、記念写真を撮り、首相の執務室でダンスを披露したりした。

ウィクラマシンハ氏はテレビ演説で首相府から他の政府庁舎に避難したと明らかにし、デモ隊に当局と協力して秩序を回復するよう呼びかけた。「私たちは憲法を遵守しなければなりません。クーデター政府の樹立は認められません。デモ隊は民主主義を守るために、当局と協力してください...」

地元メディアは軍関係者の話を引用し、「兵士が市民に発砲する可能性はゼロに等しい」と報じている。機動隊も催涙ガス弾は使用したが、デモ隊が首相府を占領すると静かに現場を離れた。

他の現地メディアも、大統領公邸や首相府に配備された兵士がデモ隊を黙って眺めている様子を報じている。

首相府に入ったデモ隊の1人はAFP通信の取材に対し、「私たちは誠実で堅実で国民に寄り添えるリーダーを求めている」と語った。「ウィクラマシンハは今すぐ辞任し、野党に権力を譲りなさい...」

野党は挙国一致内閣の発足に向けた協議を進めているが、交渉は難航していると伝えられている。

ラジャパクサ氏は週末に辞意を表明し、首相府は先日、同氏は13日に正式に辞任すると発表していた。

しかし、ラジャパクサ氏はまだ辞表を提出していないとみられる。

一部の専門家は、「逃亡=辞任であり、首相と野党は徹夜で協議を進め、速やかに挙国一致内閣を発足させなければならない」と指摘している。

スリランカは財政破綻から脱却するための協議をIMF(国際通貨基金)や関係国と進めているため、速やかに暫定大統領を選出し、経済危機と混乱を収める必要がある。

しかし、野党の協議は難航し、さらにデモ隊が新内閣を受け入れるかどうかも分からない。新大統領は難しいかじ取りを迫られるだろう。

首相府の報道官は13日の記者会見で、「与党と野党の支持を得られる新首相を指名するよう議会議長に要請した」と述べた。

暫定大統領は就任後30日以内に国会議員の中から新大統領を選ぶ選挙を実施しなければならない。その勝者は2024年後半までラジャパクサ氏の後任として任期を全うすることになる。

2022年7月13日/スリランカ、首都コロンボの首相府前(Eranga Jayawardena/AP通信)
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