◎スリランカは現在、隣国インドの信用枠40億ドルで何とか食いつないでいる。
2022年6月28日/スリランカ、首都コロンボのガソリンスタンド、暴動に備える兵士(Getty Images/AFP通信)

スリランカ政府は27日、壊滅的な経済危機の影響で国内の石油貯蔵施設が空になりかけているとして、今後2週間、燃料の一般販売を停止すると発表した。

首相府によると、今後2週間はバス、列車、医療関係、食料輸送に使用される車両にのみ燃料を配給する予定だという。

また首相府は首都コロンボを含む都市部の学校に閉鎖を命じ、市民に自宅で仕事をするよう促した。

スリランカは現在、隣国インドの信用枠40億ドルで何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。2026年までは毎年平均50億ドルを処理し続けなければならない。

専門家によると、市民への燃料販売を停止するという措置は極めて珍しいという。1970年代の石油危機では欧米で燃料の配給制が導入されたが、販売停止には至らなかった。

スリランカの人口の大多数を占める低中所得者層は原付や電動リキシャ(3輪車)を愛用している。また、この層の大多数がインフォーマルセクターで働いているため、自宅で仕事などできない。日雇い労働者も同様である。

コロンボのタクシー運転手はSNSに、「正気じゃない」と投稿している。「何が起きているのですか?政府は私たちを殺すつもりですか?」

先月就任したばかりのウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)首相は本気である。政府は27日の声明で、「7月10日まで自家用車への給油は認めない」と発表した。

ガソリンスタンドに並んでいたタクシー運転手たちは帰宅を促された。市内のスタンドには兵士が配備され、暴動に備えている。

コロンボの民間企業で働いているというフェイスブックユーザーは、「車を放置し、走って会社に向かう」と投稿した。「明日、自転車を購入します...」

コロンボ郊外で電動リキシャの運転手をしているツイッターユーザーは、「本気で餓死する可能性がある」と投稿した。「私と家族はかつて1日3回食事をしていました。今は1日2食ですが、このままだと1日1食になりそうです...」

スリランカの外貨準備は枯渇しており、輸入品の代金を支払う余裕はない。26日にスリランカ入りした米代表団は政府と協議を進めているものと思われる。

ウィクラマシンハ氏はIMFとも交渉を続けており、主要なエネルギー生産国であるロシアとカタールにも代表団を派遣した。

AP通信は政府筋の話を引用し、「スリランカの石油貯蔵施設にはディーゼル9000トンとガソリン6000トンしかない」と報じている。これは通常の需要では数日持たない量である。

政府報道官は26日の記者会見で、「燃料確保に向けた取り組みを進めているが、いつ輸入できるか分からない」と述べていた。

スリランカの債務はラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領率いる前政権の「後先考えない無謀な減税」「外貨を獲得できない無駄な施設への投資」「意味不明な政策」、中国の「債務トラップ」の影響で膨れ上がり、債務不履行に陥った。

大統領の兄弟であるマヒンダ(Mahinda Rajapaksa)氏は首相を辞めたが、ラジャパクサ氏は辞任圧力に抵抗している。

IMFの代表団は先週スリランカ入りし、30億ドルの救済措置について協議した。IMFは政府に公費を抑える「持続可能な」改革を求めている。

ウィクラマシンハ氏は今後6カ月の生活必需品を購入するために必要な資金を最低50億ドルと見積もっており、IMFだけでなくインドと中国にも支援を求めている。

またウィクラマシンハ氏は公務員に毎週1日特別休暇を与え、畑を耕して農作物を育てるよう促している。同国の公務員数は約100万人。SNSユーザーはこの特別休暇を「稲作休暇」と呼んでいる。

2022年5月19日/スリランカ、首都コロンボで行われた抗議デモ(Eranga Jayawardena/AP通信)
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