◎大統領選は20日に行われる予定。
スリランカの国会議員はまもなく新大統領を選出する予定だが、与党に指名されたウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)大統領代行が選出されれば、スリランカは再び大混乱に陥る可能性がある。
大統領選は20日に行われる予定。
立候補を表明したのは以下の3人。
▽アラハペルマ(Dullas Alahapperuma)氏
▽ウィクラマシンハ氏
▽ディサナヤケ(Anura Kumara Dissanayake)氏
与党の支持を得たウィクラマシンハ氏は最有力候補と目されている。
しかし、猛烈な抗議デモで大統領公邸を占領し、ウィクラマシンハ氏の私邸を焼き払ったデモ隊は、ラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)前大統領だけでなくウィクラマシンハ氏の辞任も求めている。
対立候補のアラハペルア氏はスリランカを立て直すために粉骨砕身すると誓っている。
新大統領に選出された者は、2024年11月までラジャパクサ氏の後任を務める予定である。
スリランカは現在、隣国インドの信用枠で何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。
国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。
国民は調理用ガス、ガソリン、食料、その他日用品の入手に苦労しており、その影響は貧困層から中産階級に拡大。世界に衝撃を与えた。
新大統領は国際通貨基金(IMF)との救済交渉を主導することになる。一部の専門家は5月に就任しIMFと交渉を行ってきたウィクラマシンハ氏が「最も無難」と指摘している。
しかし、デモ隊はウィクラマシンハ氏に去るよう促している。ある抗議グループのリーダーは地元メディアの取材に対し、「ラジャパクサとつながりの深い男が大統領に就任すれば、今度は国会を占領する」と警告した。
デモ隊は20年近くスリランカを率いたラジャパクサ一族に経済危機の責任を負わせると主張している。
デモ隊は先週、大統領公邸を含む政府庁舎を占領し、ラジャパクサ氏が辞任するまで居座ると宣言した。
ラジャパクサ氏は占領前に軍用機でモルディブに飛び、シンガポールに入国。姿を消したものの、議長にメールで辞表を提出し、受理された。
国会議員225人は3人の候補に投票し、過半数を獲得した候補が新大統領に就任する。1回目投票で票がばらければ、上位2人の決選投票に移行する。
地元メディアによると、ウィクラマシンハ氏とアラハペルマ氏の支持率が拮抗しており、この2人が決選投票に進む可能性が高いという。
アラハペルマ氏はラジャパクサ派の与党スリランカ人民戦線(SLPP)所属。ラジャパクサ政権の大臣を務めていたが、今年4月に辞任した。
一方、野党「統一国民党」を率いるプレマダサ(Sajith Premadasa)議員は土壇場で方針を変更し、出馬を取りやめた。
プレマダサ氏は19日、「統一国民党はアラハペルマ氏を支持する」と表明した。統一国民党は議席の4分の1を占める。
一部の地元メディアは政府筋の話を引用し、「プレマダサ氏はウィクラマシンハ氏に勝つために撤退を表明した」と報じている。ある専門家はアラハペルマ氏が新大統領、プレマダサ氏が新首相と予想した。
ウィクラマシンハ氏は6回首相を務めた経験を持つが、一度も任期を全うしたことがない。
一部の抗議団体はウィクラマシンハ氏が大統領に就任したらデモを強化すると宣言しているため、国会議員は難しい選択を迫られることになるだろう。
デモ隊はウィクラマシンハ氏とラジャパクサ一族が密接な関係にあることを非難している。
大統領府前の芝生広場で野営している男性はAP通信の取材に対し、「ウィクラマシンハは2カ月前にラジャパクサ一族の責任を追及すると約束したが、結局何もしなかった」と語った。「あの男が政権を取れば、私たちも黙ってはいません...」