◎新大統領に選出されたウィクラマシンハ氏は21日朝、首都コロンボの国会前で宣誓した。
スリランカの新大統領に選出されたウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)氏が21日、宣誓した。
同氏は20日の議会投票で野党候補を破り、選出された。
スリランカは現在、隣国インドの信用枠で何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。
国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。
国民は調理用ガス、ガソリン、食料、その他日用品の入手に苦労しており、その影響は貧困層から中産階級に拡大。世界に衝撃を与えた。
大統領公邸などを占領したデモ隊はラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)前大統領だけでなくウィクラマシンハ氏の退陣も要求していたため、20日の投票結果は怒りを引き起こした。
ウィクラマシンハ氏は首相を6回務めているが、任期を全うしたことは一度もない。しかし、外交や国際問題で幅広い経験を持ち、国際通貨基金(IMF)との救済交渉を主導してきた手腕を買われ、今回大統領に選出された。
ラジャパクサ一族とつながりの深いウィクラマシンハ氏の就任はデモ隊の怒りを買ったが、議員たちは同氏の力が必要と判断したようだ。デモ隊は先週、ウィクラマシンハ氏の私邸を焼き払っている。
ウィクラマシンハ氏は20日の投票後、野党に協力を呼びかけ、一致団結して前に進む必要があると訴えた。しかし、デモ隊は代わりに大統領府前に押し寄せ、「ラニル、帰れ!」と叫んだ。
ウィクラマシンハ氏は21日朝、首都コロンボの国会前で宣誓した。AP通信によると、新首相は今週中に組閣を開始する予定だという。
一方、ロイター通信は政府筋の話を引用し、「大統領就任式は国営メディアで生中継される予定だったが、停電の影響で生中継できなかった」と報じた。
ウィクラマシンハ氏は就任演説で、「IMFとの交渉は妥結に近づいており、他国からの援助に関する交渉も進んでいる」と述べた。また新内閣は燃料と調理用ガスの不足を解消するための措置を講じるとした。
IMFのゲオルギエワ(Kristalina Georgieva)専務理事は20日、「IMFは救済交渉が順調に進むことを望んでいる」と声明を発表した。
ウィクラマシンハ氏は2024年11月まで大統領を務める予定である。