ラジャパクサ大統領は先週末に辞意を表明していた。
スリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領(Getty-Images/PAメディア)

スリランカから軍用機で国外に逃亡したラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領は13日、インド洋の島国モルディブに上陸し、再び姿を消した。

報道によると、ラジャパクサ氏は妻と警備当局者2人と行動を共にしているという。

AFP通信は政府筋の話を引用し、「ラジャパクサ氏は現地時間午前3時頃に首都マレの空港に到着した」と報じている。

ラジャパクサ氏はモルディブ政府の車両に乗り込み、どこかに消えた。行き先は明らかにされていない。

CNNニュースによると、ラジャパクサ氏はモルディブから第三国に移動するとみられる。同氏の弟のバジル・ラジャパクサ(Basil Rajapaksa)前財務大臣もスリランカを離れ米国に向かったと伝えられている。

ラジャパクサ氏とウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)首相は先週末に辞意を表明していた。

スリランカの憲法によると、現職の大統領は免責特権を与えられている。ラジャパクサ氏は新政権発足後に逮捕されると考え、逃亡したとみられる。

ラジャパクサ氏の逃亡により、スリランカにおけるラジャパクサ一族の支配は終焉を迎えた。

首都コロンボの市民は早朝のニュース速報でラジャパクサ氏の国外逃亡を知り、デモ会場に足を運んだ。

中心部の集会場には市民向けの演説用仮設ステージが設置されている。デモ隊の代表や関係者は次々に政府を非難した。

ある男性はラジャパクサ氏の逃亡に激怒し、「説明責任を果たしていない」と憤慨した。「最も恐れていたことが起きました。あの男は逃げたのです。スリランカはあの男のせいで滅茶苦茶になりました。私は不正で財を成したラジャパクサ一族をひとり残らず捕らえ、農作業ができる刑務所に送りたいと思っています」

別の抗議者はラジャパクサ氏の逃亡を歓迎した。「あの一族と縁を切り、やり直す時がきました。スリランカは先進国になれると信じています」

スリランカは現在、隣国インドの信用枠で何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。

国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。

この数カ月、市民は計画停電に直面し、調理用ガスを購入するために何時間も並び、食料や医薬品不足に悩まされてきた。

一部の活動家はラジャパクサ氏を訴追すべきと主張しているが、同氏が不正に関与したかどうかは不明である。

ラジャパクサ氏の逃亡はスリランカに政治空白をもたらす可能性がある。ウィクラマシンハ氏は野党の連立内閣が発足した場合、速やかに辞任するとしているが、野党の協議は難航していると伝えられている。

ラジャパクサ氏の逃亡は退陣を意味するため、憲法に基づいてウィクラマシンハ氏が暫定大統領に就任すると思われる。しかし、デモ隊はウィクラマシンハ氏にも辞任を要求しており、同氏の私邸と首相公邸を焼き払っている。

大統領と首相が辞任した場合、議会議長のアベイワデナ(Mahinda Abeywardana)氏が暫定大統領に就任する。

しかし、アベイワデナ氏はラジャパクサ氏とつながりが深く、デモ隊が就任を受け入れる可能性は低いとみられる。 大統領公邸を占領したデモ隊は「ラジャパクサ氏が辞任するまで居座る」と主張しており、混乱が収束する見通しは全く立っていない。

 暫定大統領は就任後30日以内に国会議員の中から新大統領を選ぶ選挙を実施しなければならない。その勝者は2024年後半までラジャパクサ氏の後任として任期を全うすることになる。

2022年7月9日/スリランカ、首都コロンボの大統領公邸のプール(Eranga Jayawardana/AP通信)
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