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韓国、中国人団体観光客のビザ(査証)免除を開始

近年の韓国と中国の関係は、経済的には密接でありながらも、安全保障や地政学的な側面で複雑な緊張関係が続いている。
韓国、首都ソウルの公共バス(Getty Images)

韓国が29日、中国人団体観光客に対するビザ(査証)免除を開始した。この措置により、経済活性化と中国との関係改善が期待されている。

期間は来年6月まで。中国本土からの3人以上の団体観光客はビザなしで15日間滞在できる。

韓国企業は中国人観光客の増加と需要増を見込んでいる。旅行会社は中国人向けツアーを企画し、主要なフードデリバリーアプリはアリペイとWeChat Payの決済オプションを導入した。

中国は昨年11月に韓国人に対し最長30日間のビザ免除を決定。韓国が中国本土の旅行者に同様のビザ免除措置を実施したのは2017年12月から2018年3月までの平昌冬季五輪開催期間中が最後であった。

近年の韓国と中国の関係は、経済的には密接でありながらも、安全保障や地政学的な側面で複雑な緊張関係が続いている。両国は1992年に国交を樹立して以来、特に経済分野で急速に関係を深めてきた。中国は長年にわたって韓国にとって最大の貿易相手国であり、韓国企業も中国市場に多く進出してきた。一方で、中国にとっても韓国は重要な経済パートナーであり、特に半導体や電子部品の分野での協力が注目される。

しかし、2016年以降、両国関係には大きな亀裂が生じた。原因は、韓国が米国と協力してTHAAD(高高度防衛ミサイル)を自国に配備したことにある。中国はこれを自国の安全保障への脅威とみなし、強く反発した。その結果、中国国内で韓国製品の不買運動や韓国芸能人の活動制限、韓国企業に対する規制など、いわゆる「限韓令」が実施されたとされる。これにより、韓国経済と文化産業は一時的に大きな打撃を受けた。

近年、韓国は米中対立の中で難しい立場に置かれている。文在寅政権時代には、対中関係の安定を模索しつつも、北朝鮮問題や安保政策の観点から米韓同盟の強化も図られた。尹錫悦政権に入ってからは、より明確に米国寄りの外交姿勢を取り、中国との関係は冷却気味である。特に、インド太平洋戦略や米日韓の三国協力体制への参加などが、中国側の警戒を招いている。

一方で、経済面では依然として相互依存の関係が続いている。韓国企業は中国市場への依存を徐々に減らしつつあるが、完全な脱中国は現実的ではない。また、中国も半導体などの先端技術で韓国に依存しており、相互の協力が不可欠な分野は残っている。

文化交流においては、K-POPや韓国ドラマの人気が根強く、中国国内でも韓流の影響は大きい。ただし、政治的な規制の影響で、その影響力は以前ほどではない。韓国側でも中国の文化的影響に対する警戒感が強まっており、国民感情の面でも両国の距離はやや広がっている。

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