韓国国会が偽情報対策法案を可決、フェイクニュース対策、懸念も
法案の中心的な規定では、虚偽情報を意図的に拡散し、他者に損害を与えたと裁判所が認定した場合、その損害額の最大5倍の懲罰的損害賠償を命じることができるとしている。
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韓国の国会は24日、「偽情報対策法案」を与党・共に民主党の主導で可決した。この法案は「虚偽または捏造された情報」を報道・配信したニュースメディアやインターネットメディアに対して重い懲罰を認める内容であり、与野党や市民社会の間で賛否が分かれている。法案の可決は与党主導で170対3の賛成多数で成立、多数の保守系議員が採決をボイコットした。
法案の中心的な規定では、虚偽情報を意図的に拡散し、他者に損害を与えたと裁判所が認定した場合、その損害額の最大5倍の懲罰的損害賠償を命じることができるとしている。また、損害の算定が困難な場合に備え、最大5000万ウォン(約539万円)の賠償も認められるほか、同一情報を2度以上流布した事業者に対しては最大10億ウォン(約10.7億円)の罰金を課す権限を放送通信委員会に与える規定も設けられた。
与党側はこの法案はフェイクニュースや誤情報の横行によって民主主義が分断され、社会的不信が蔓延している現状に対応するために必要だと主張している。特に最近発生した非常戒厳を巡る混乱の際、根拠のない動画や投稿が政治的不安を煽ったことを例に挙げ、法的規制の強化が急務だと説明している。
しかし、ジャーナリスト団体や表現の自由を擁護する市民団体は強く反発している。これらの団体は法案の文言が「禁止される情報の範囲」を明確に定義しておらず、政治家や企業に対する批判報道まで抑制されかねないと警告している。法案に盛り込まれた損害賠償規定が濫用されれば、批判的な報道機関や独立系メディアが訴訟リスクにさらされ、自己検閲を強いられる可能性があるとの懸念が根強い。
一方、与党は法案が故意に悪質な偽情報を広めて利益を得たり他者を害した場合に限定して適用されるとして、合法的な批判や報道は対象外であると強調している。また、風刺やパロディは表現の自由として保護されるとの規定を設け、法的規制が不当に適用されないよう配慮がなされていると説明している。
韓国の市民社会は政府や大企業がこの法律を悪用して批判を封じ込める可能性を懸念しており、憲法裁判所への違憲審査請求やイ・ジェミョン(Lee Jae-myung)大統領による拒否権行使を求める声も上がっている。ジャーナリスト団体は声明で、「真の偽情報は確かに害を及ぼすが、法的手段に頼りすぎることは表現の自由と報道の独立性を損なう」と訴えた。
専門家の中には、規制の目的自体には一定の支持があるものの、法の適用基準や運用方法の明確化が不可欠だとする意見もある。現行法がどのように運用され、メディア環境や公論形成にどのような影響を与えるかは今後の焦点となる見込みだ。
法案は成立後、大統領の署名を経て施行される予定であり、韓国社会では情報の真偽と表現の自由の境界をめぐる議論が一層激しくなることが予想されている。
