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ミャンマーの反政府勢力が議会選候補者を拘束=国営メディア

ミャンマー国営放送(MRTV)によると、拘束されたのは37歳の男性。少数民族政党に所属し、議会選に立候補していた。
2025年10月28日/ミャンマー、最大都市ヤンゴン、総選挙に関連するイベント(AP通信)

ミャンマーの反政府勢力が総選挙(12月28日実施予定)の候補者を拘束した。国営メディアが3日に報じた。

これは選挙を巡る混沌と緊張が高まる中、初めて確認された拘束事案とみられる。

ミャンマー国営放送(MRTV)によると、拘束されたのは37歳の男性。少数民族政党に所属し、議会選に立候補していた。

男性は11月29日の午後3時ごろ、中部地方の自宅で、家族といたところをバイク2台で現れた3人組の武装勢力に連れ去られたという。

拘束したとされる勢力は「人民防衛軍(PDF)」の地域部隊のメンバーと報じられている。

報道によると、警察当局が3人を追跡中。選挙法の規定に基づき捜査を行っており、選挙候補者を拘束し選挙活動を妨害したとして、逮捕された場合、7年以下の懲役刑に処される可能性があるという。

一方、男性が所属する政党は候補者の安全への懸念から今回の拘束に関して表立ったコメントを出していない。

この政党は今回の選挙に全国で580人以上の候補者を擁立しており、国内で5番目の勢力となっている。党自体は明示的な反軍政政党ではないとされるが、その選挙参加が軍政の正統性を補強するとの批判もあった。

今回の拘束はミャンマー国内で続く反政府勢力と軍政の対立構造が、選挙という政治プロセスをも深く侵食していることを改めて浮き彫りにした。

2021年の軍事クーデター以降、大規模な武装反乱と治安の悪化が続いており、選挙の自由さ、公正さへの疑問は国際社会からも強まっている。

実際、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は公平な政治参加を妨げる恐れのある暴力や抑圧が広がっているとして、選挙の実施環境を強く懸念している。

また、地元メディアの報道では、今年7月に施行された新たな選挙法の下で、映画監督を含む約100人が既に拘束・投獄されており、中には49年の懲役刑を宣告された者もいるとの情報がある。

こうした動きは軍政側の統制強化と、反対派あるいは独立系の候補者や言論・表現の自由を封じ込める意図が背景にあるとみられている。

このような状況のなかで行われる選挙は、国内の多くの地域で安全保障が確保されていない状態で、有権者が自由かつ安全に投票できるかどうかについて疑問が残る。

軍政を支える勢力に有利な状況が続くなか、今回の拘束は選挙の正当性と民主主義の復元という国際的な議論を再燃させる可能性が高い。

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