香港に報道の自由なし、政府の圧力と自主検閲
世界的な報道の自由度を示す指数で、香港はこの20年間で18位から140位まで急落した。
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香港の報道の自由はかつての「自由奔放」から大きく後退し、政府や社会の「レッドライン(越えてはならない線)」とメディアの自主規制が広がることで、メディア環境が大きく変容している。世界的な報道の自由度を示す指数で、香港はこの20年間で18位から140位まで急落した。この背景には、民主派メディアの閉鎖やジャーナリストに対する法的な圧力、自主検閲の増加があると指摘されている。
この変化は、2020年に中国が施行した香港国家安全維持法(国安法)の影響が大きいとされる。国安法は政府に対する挑戦を排除するための措置とされ、施行後に西洋的な市民的自由が幅広く制限されるようになった。民主派の代表的な新聞「リンゴ日報(Apple Daily)」の創設者であるジミー・ライ氏(黎智英、Jimmy Lai)氏が昨年12月に同法違反などで有罪判決を受け、終身刑に処される可能性もある。政府側はこの裁判が報道の自由とは無関係だと主張している。
かつて香港のメディアは、政府に対して積極的な質問を投げかけ、政治家や公務員の批判的なスクープを連発するなど、自由な報道が行われていた。しかし、国安法施行後、記者たちの取材空間は大幅に狭められた。2021年6月にはリンゴ日報の資産が凍結され、主要役員らが逮捕されるなどして同紙は実質的に廃刊・閉鎖に追い込まれた。また、オンラインニュースサイトの『スタンド・ニュース』も同年12月に警察の捜査や資産凍結を受けて閉鎖に至った。これにより、香港は2022年の報道の自由度指数で148位まで下落した。
さらに2024年にはスタンド・ニュースの編集者2人が、旧植民地時代の治安維持法に基づき扇動的な記事を掲載したとして有罪判決を受けた。リンゴ日報の関係者らも、外国勢力との共謀や扇動記事の発行などの罪で有罪を認めている。こうした一連の事件は「かつて当たり前だった取材・報道行為がもはや許容されない」ことを示していると、香港中文大学の教授は解説する。
一方で、報道現場での自主検閲も顕著になっている。政治的に敏感な話題を避ける報道機関が増えたのは、単に政治の影響だけでなく、広告主や大企業との関係を損ねないようにする経済的圧力も一因だという指摘がある。多くの大企業は中国本土の巨大市場や政府との関係を重視し、批判的な報道は敬遠されがちだ。また、取材対象者自身が「話すことのリスク」を恐れて取材に応じないケースも増えており、自主検閲が社会全体に広がっているとみられる。
香港記者協会は、政治的に敏感とみなされる多くの話題が十分に報じられていない実態を指摘し、政府や親中勢力からの反応を取材しバランスを取ることへの過度な懸念があると述べている。また、最近の集合住宅火災の取材では、当初は活発に報道が行われたものの、その後当局や関係者への警告や逮捕が相次ぎ、取材の自由度が低下した。
政府側は、市民の人権や自由は基本法や憲法で保障されていると強調しているが、報道関係者や専門家は現在の状況を「かつての自由とは大きく異なる」と評している。社会全体での自主検閲が進む中でも、一部のメディアは制約の中で取材・報道の道を模索しているが、香港の報道環境が以前の水準に戻る見通しはなお不透明だ。
