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ミャンマー総選挙、投票始まる、民主派との戦闘続く中

選挙は3段階で行われ、第1段階では全国330の行政区のうち102地区で投票が行われる。結果は最終段階(26年1月25日)の投票が終了後、発表される見込みである。
2025年12月28日/ミャンマー、最大都市ヤンゴンの投票所(AP通信)

ミャンマーで12月28日、2021年の軍事クーデター以降初めてとなる総選挙の投票が始まった。今回の選挙は軍事政権の統治下で実施されており、国内外で正当性や公平性を巡る疑問の声が強まっている。選挙は3段階で行われ、第1段階では全国330の行政区のうち102地区で投票が行われる。結果は最終段階(26年1月25日)の投票が終了後、発表される見込みである。

現地メディアによると、首都ネピドーや最大都市ヤンゴンなどの高校、政府施設、宗教施設などに投票所が設けられている。選挙管理委員会は今回初めて電子投票機を導入し、準備を進めた。治安面では軍や治安部隊が各地で警戒に当たり、軍用車両が道路を巡回するなど緊張感が高まっている。

選挙を巡っては、国内外から批判が相次いでいる。反対派は今回の選挙が軍政の正当性を補強するための「見せかけ」に過ぎないと指摘している。2021年2月のクーデターで追放された民主化運動の指導者アウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)氏の国民民主連盟(NLD)は2023年に解散させられ、他の主要政党も選挙への参加資格を失った。さらに多くの野党や政治グループが軍政下の不公平な条件を理由に立候補を拒否し、ボイコットを呼び掛けている。

スーチー氏は現在、複数の罪状で服役中、選挙に参加できない状態にある。特に、2020選挙で有権者の73%が支持したNLDがこの選挙には存在せず、選挙における選択肢の欠如が指摘されている。アジア自由選挙ネットワークのアナリストは、実質的な選択肢がほとんどないと述べている。

選挙は軍政の管理下で行われているが、人権団体や国連は表現の自由や集会の自由が制限され、選挙を批判すること自体が厳しく罰せられる状況にあると警鐘を鳴らしている。地元の政治犯支援団体によると、現在2万2000人以上が政治犯として拘束され、2021年のクーデター以降、治安部隊の攻撃による民間の死者は7600人を超え、約360万人が避難生活を余儀なくされている。

こうした中、国際社会の対応は分かれている。西側諸国は軍政に対する制裁を維持し、選挙が自由かつ公正でないとの懸念を表明している。一方で中国やインド、タイなどの近隣諸国は安定を理由に関係を継続する意向を示している。反対派は軍政がこの選挙を通じて内外に正当性を示そうとしていると分析するが、選挙結果が民主的な移行ではなく軍の支配を強化するものになる可能性が高いとの見方が強い。

国内では選挙への参加を躊躇する有権者も多く、強制や報復への恐れから投票を避ける動きもある。選挙期間中の治安や投票率、最終結果が今後のミャンマー情勢にどのような影響を与えるかが注目される。

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