フィリピン副大統領、自身の弾劾決議案を「紙くず」と一蹴

議会上院(元老院、定数24)は10日、この弾劾決議案を下院(定数316)に差し戻し、憲法適合性を明確にするよう求めた。
フィリピンのマルコス・ジュニア大統領(左)とドゥテルテ副大統領(AP通信)

フィリピンのサラ・ドゥテルテ(Sara Duterte)副大統領が連邦議会上院に対し、自身に対する弾劾決議案を「紙くず」と評し、根拠がなく、憲法違反であるため、今すぐ破棄すべきであると非難した。

議会上院(元老院、定数24)は10日、この弾劾決議案を下院(定数316)に差し戻し、憲法適合性を明確にするよう求めた。

下院(定数316)は今年2月、サラ氏の弾劾決議案を賛成多数で可決し、上院に送った。

しかし、上院は決議案の審理開始から数時間後、下院に差し戻す決議を可決した。

上院はその後、サラ氏に意見書を提出するよう命じた。

サラ氏は23日付けの上院への回答で、自身に対する告発を根拠のないものとして退け、「証拠に裏付けられていない誇張と推測に過ぎない」と一蹴した。

サラ氏は昨年11月、自身が暗殺された場合、マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領とその妻、下院議長を殺害するために暗殺者と契約を結んだと明らかにした。

当局はこの事態を受け、サラ氏に召喚状を送り、マルコス・ジュニア氏との争いの詳細を明らかにするよう命じた。

マルコス・ジュニア氏とサラ氏は22年の大統領選で勝利して以来、何度も対立してきた。フィリピンでは副大統領も選挙で選出するため、同国を代表する2つの勢力がポストを占める結果となった。

マルコス家とドゥテルテ家はフィリピンで最も強力な一族であり、激しい権力争いを繰り広げてきた。

今回の暗殺論争の背景にはサラ氏の父であるドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)前大統領とマルコス・ジュニア氏の確執がある。

サラ氏は公的資金を不正使用し、説明のつかない富を蓄えたという疑惑にも直面している。サラ氏はこれらの疑惑を全て否定している。

一方、サラ氏の父であるドゥテルテ前大統領は3月、国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状に基づき、首都マニラの空港で逮捕、オランダ・ハーグに送還された。

サラ氏は2028大統領選の最有力候補と見なされているが、この弾劾決議案と検察の捜査次第で公民権を停止される可能性がある。

マルコス・ジュニア氏を支持する勢力は上院が政治的な理由で弾劾決議案を差し戻したと主張している。

人権団体や教会も上院の決定を非難。「憲法を冒とくする行為であり、上院は公職者の責任を追及するという義務を放棄した」と指摘した。

検察庁も弾劾手続きを止める理由はないと指摘し、上院の決定に懸念を表明した。

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