フィリピン最高裁「副大統領の弾劾決議案は違憲」政治闘争に終止符

マルコス・ジュニア氏とサラ氏は22年の大統領選で勝利して以来、何度も対立してきた。
フィリピンのサラ・ドゥテルテ副大統領(AP通信)

フィリピンの最高裁判所は25日、サラ・ドゥテルテ(Sara Duterte)副大統領に対する弾劾決議案を無効と裁定し、一連の政治闘争に終止符を打った。

地元メディアによると、最高裁はサラ氏に対して提起された弾劾請求を憲法違反と裁定。これにより、マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領の暗殺計画を含むサラ氏に対する告発は全て無効となった。

最高裁は声明で、「下院は2月にサラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾決議案を可決し、上院に送ったが、下院は弾劾対象の公職者に対し、下院が1年間に処理できる弾劾案件は1件のみという規則に違反した」と述べた。

それによると、下院は24年12月から25年2月にかけて、サラ氏に関する4件の弾劾案件を提起。そのうち1件のみを採決し、上院に送った。

残り3件の弾劾案件は下院の議事日程に載せられたが、採決は行われず、却下された。

最高裁は声明の中で、「弾劾決議案とそれに関連する捜査は全て無効である」と強調した。

議会上院(元老院、定数24)は先月、この弾劾決議案を下院(定数316)に差し戻し、憲法適合性を明確にするよう求めた。

下院(定数316)は今年2月、サラ氏の弾劾決議案を賛成多数で可決し、上院に送った。

しかし、上院は決議案の審理開始から数時間後、下院に差し戻す決議を可決した。

上院はその後、サラ氏に意見書を提出するよう命じていた。

サラ氏は上院への回答で、自身に対する告発を根拠のないものと一蹴。「証拠に裏付けられていない誇張と推測に過ぎない」とした。

サラ氏は昨年11月、自身が暗殺された場合、マルコス・ジュニア氏とその妻、下院議長を殺害するために暗殺者と契約を結んだと明らかにした。

当局はこの事態を受け、サラ氏に召喚状を送り、マルコス・ジュニア氏との争いの詳細を明らかにするよう命じた。

マルコス・ジュニア氏とサラ氏は22年の大統領選で勝利して以来、何度も対立してきた。フィリピンでは副大統領も選挙で選出するため、同国を代表する2つの勢力がポストを占める結果となった。

マルコス家とドゥテルテ家はフィリピンで最も強力な一族であり、激しい権力争いを繰り広げてきた。

今回の暗殺論争の背景にはサラ氏の父であるドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)前大統領とマルコス・ジュニア氏の確執がある。

サラ氏は公的資金を不正使用し、説明のつかない富を蓄えたという疑惑にも直面している。サラ氏はこれらの疑惑を全て否定している。

サラ氏の父であるドゥテルテ前大統領は3月、国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状に基づき、首都マニラの空港で逮捕、オランダ・ハーグに送還された。

サラ氏は2028大統領選の最有力候補と見なされているが、この弾劾案件と検察の捜査次第で公民権を停止される可能性があった。

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