◎IOCのトーマス・バッハ会長は先月、彭帥(ポン・シュアイ)選手とオンラインで対話した際の写真を公開し、「彼女はうまくやっており、元気だ」と述べた。
女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモンCEOは彭帥(ポン・シュアイ)選手の失踪事件を受け、2022年に中国で予定されていた試合をすべて中止すると発表したが、他の主要なスポーツ団体は問題に関するコメントを控えている。
WTAは国際オリンピック委員会(IOC)、男子プロテニス協会(ATP)、NBA、PGAツアーなど、中国で数千万から数億ドルの収益を上げている国際的なスポーツ団体に先駆け、人権を尊重しない中国共産党に立ち向かうと宣言した。
しかし、2カ月後に北京冬季五輪を主催するIOC、2022年のツアー開始を控えているATP、PGAツアーなどはWTAほど彭帥失踪事件に熱心ではないように見える。
WTAのスティーブ・サイモンCEOは1日の声明で、「女性の権利を尊重せず、性的暴行の申し立てを一掃する中国でトーナメントを開催することはできない」と述べ、事件の真相解明に向けた取り組みを加速させるよう共産党に強く求めた。
ソーシャルメディアには、IOCのトーマス・バッハ会長とNBAのアダム・シルバー コミッショナーなどが人権問題を尊重する可能性は低いという投稿が相次いで寄せられた。
バッハ会長は彭帥 選手とオンラインで対話した際の写真を公開し、「彼女はうまくやっており、元気だ」と述べたが、一部の専門家はこの発言に異議を唱え、ある人権活動家はバッハ会長を「共産党の飼い犬」と呼んだ。
北京冬季五輪は数十億ドルの収益をIOCにもたらす可能性が高いため、バッハ会長は彭帥 選手の無事をアピールすることで問題の沈静化を図った。
しかし、IOCの長老ディック・パウンド委員は先日放送されたCNNニュースのインタビューの中で、「バッハが彼女は元気だと言った時、彼は共産党のスポークスマンになるオーディションを受けたと思った」と述べ、オンライン対話と写真の公開は失敗だったと示唆した。
パウンド委員はCNNに、「バッハは圧力に対処した」と述べた。「これが五輪のプレッシャーです。私はオンライン対話の映像も音声も見ていません。彭帥は脅迫されていませんか?本当にオンラインで対話したのですか?」
一方、NBAは2019年の混乱と同じ事態に陥ることを恐れており、彭帥失踪事件にはこれからも言及しないと信じられている。
NBAヒューストンロケッツのゼネラルマネージャーだったダリル・モーリー氏は2019年、香港の抗議を支持するとツイートし、最大の海外市場である中国の激しい反発に直面した。
NBAのシルバー コミッショナーはモーリー氏のツイートを「残念」と呼び、年間数億ドルの収益を見込める中国の横に立った。シルバー コミッショナーはこの問題の火消しに2年近く費やしている。
WTAの市場規模はIOCやNBAに比べるとはるかに小さいが、それでも事件の真相を解明するために共産党と対峙する道を選んだ。
プロスポーツのアナリストや専門家はWTAの決定を「スポーツ史上最も勇敢な行動」と称賛した。
女子テニス界の偉人、ビリー・ジーン・キング氏はツイッターに、「これが女子テニスが女子スポーツのリーダーである所以だ」と投稿し、サイモンCEOを称賛した。
WTAは中国で毎年多くのトーナメントを開催しており、2019年シーズンはWTAファイナルズを含む9つのトーナメントを開催し、賞金総額は3,000万ドル(約34億円)を超えた。WTAファイナルズは2028年まで中国の深圳(しんせん)市で開催されることがすでに決まっている。
サイモンCEOは、「中国大会の中止が問題の解決に役立つという保証はなく、さらに私たちは数千万ドルを失うだろう」と述べた。「しかし、私たちは大会を管理し、新たなツアーの在り方を見つけることができると確信しています...」
ATPのアンドレア・ガウデンツィ会長は2日の声明でWTAの決定を擁護したが、中国大会の中止については言及しなかった。
一方、中国外務省の報道官は2日、「中国はスポーツの政治化に強く反対する」と述べ、失踪事件に関する質問を却下した。
彭帥 選手は先月2日、共産党の政治局常任委員会のメンバー兼元副首相である張高麗(ちょうこうれい)氏に7年前に性的暴行を受け、3年前にはテニスの試合後にセックスを強要されたと告白し、行方不明になった。
失踪事件は広範な懸念と怒りを引き起こし、国連、米国、世界のスポーツ選手、テニス協会、主要な人権団体が彭帥 選手と家族の安全を保障し、その証拠を提供するよう中国共産党に求めた。