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米国のワクチン嫌悪、新生児に対する予防医療を拒否する親も


問題となっているのは、ビタミンK投与やB型肝炎ワクチン、抗菌眼軟膏の使用といった標準的な医療措置である。
麻しん(はしか)ワクチン(Getty Images)

米国で新生児に対する予防医療を保護者が拒否する動きが広がり、小児医療の現場で懸念が高まっている。これまで議論の中心だったワクチン接種だけでなく、出生直後に行われる基本的な予防処置までも拒否されるケースが増えているという。

問題となっているのは、ビタミンK投与やB型肝炎ワクチン、抗菌眼軟膏の使用といった標準的な医療措置である。これらはいずれも新生児の健康を守るために長年実施されてきたもので、重篤な疾患や感染症を防ぐ役割を担っている。しかし近年、一部の保護者がこれらの処置を「不必要」あるいは「有害」とみなし、拒否する傾向が強まっている。

例えばビタミンKは出生直後の赤ちゃんに投与しなければ、出血性疾患を引き起こすリスクがある。新生児は体内でビタミンKを十分に生成できないため、脳出血など致命的な合併症を防ぐ目的で投与が推奨されている。それにもかかわらず、自然志向の育児や医療不信の影響から、注射を避ける親が増えているという。

同様に、B型肝炎ワクチンは母子感染や将来的な感染リスクを防ぐために出生直後に接種されるが、親が「必要ない」と判断して見送るケースもある。また、出産時に細菌感染を防ぐための眼軟膏についても、「視覚に影響する」といった誤解から拒否されることがある。

医師らは、こうした判断の背景にインターネットやSNS上の誤情報があると指摘する。科学的根拠に乏しい情報が広まり、医療への不信感を助長しているという。特にパンデミック以降、ワクチンを巡る議論が社会的分断を生み、その影響が他の医療分野にも波及しているとみられる。

現場の小児科医にとっても対応は難しい。保護者の意思を尊重する必要がある一方で、子どもの健康を守る責任があるため、説得や説明に多くの時間を割かざるを得ない。中には、必要な処置が拒否された場合、退院後のリスクについて詳細な同意書を求める医療機関もある。

こうした傾向は一部地域にとどまらず、全米各地で報告されている。医療関係者は予防医療の重要性が軽視されることで、かつては防げたはずの疾患が再び増加する可能性を懸念している。特に新生児期は免疫が未熟であり、わずかな感染でも重篤化する危険がある。

専門家は、正確な医療情報をわかりやすく伝えることが急務だと強調する。同時に、保護者との信頼関係を築き、不安や疑問に丁寧に向き合うことが重要だとしている。予防医療の後退は個々の家庭の問題にとどまらず、公衆衛生全体に影響を及ぼしかねない課題であり、社会的な対応が求められている。

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