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パプアニューギニア政府、オーストラリアとの安全保障条約を承認、締結へ

アルバニージー氏は先月、条約締結のためにパプアニューギニアを訪問したが、パプア側の事情で実現しなかった。
2025年9月16日/パプアニューギニア、首都ポートモレスビー、マラペ首相(右)とオーストラリアのアルバニージー首相(AP通信)

パプアニューギニア政府がオーストラリアとの安全保障条約を承認した。マラペ(James Marape)首相が2日、明らかにした。

マラベ氏は声明で「オーストラリアがこの種の相互防衛条約を結んでいるのは他に1カ国のみであり、パプアニューギニアの要請により同国とこの条約を締結する」と述べた。

オーストラリアは1951年に米国・ニュージーランドとアンザス条約を結んでいる。

マラペ氏は「これは両国間の深い信頼関係、歴史、そして共有する未来を反映している」と付け加えた。

オーストラリアのアルバニージー(Anthony Albanese)首相はこの承認を歓迎。マラペ氏と近く、条約に署名すると表明した。

アルバニージー氏は声明で「両国は最も近い隣国であり、最も親密な友人である。この条約により両国関係は正式な同盟関係へと格上げされる」と述べた。

アルバニージー氏は先月、条約締結のためにパプアニューギニアを訪問したが、パプア側の事情で実現しなかった。

これは、同地域における中国の影響力を抑制することを目的としている。

近年、南太平洋地域において中国は覇権主義的ともいえる積極的な影響力拡大を進めている。中国政府はこの地域を「一帯一路」構想の重要な一部と位置づけ、経済援助、インフラ投資、外交関係の強化などを通じて、島嶼国への影響力を高めようとしてきた。

中国の戦略の中心には経済的手段がある。フィジー、ソロモン諸島、パプアニューギニア、バヌアツなどの国々に対して、中国は港湾や道路、政府庁舎の建設など大規模インフラ投資を行ってきた。これらの援助は一見すると経済協力に見えるが、実際には相手国に対する政治的・外交的な影響力の拡大を意図しているとされる。中国の支援には多くの場合、返済義務のある融資が含まれており、これが「債務トラップ外交」として批判されることもある。

さらに注目されるのは、軍事・安全保障面での動きである。2022年にはソロモン諸島と中国が安全保障協定を締結し、中国の艦船が同国に寄港する可能性が高まった。この協定により、中国が南太平洋に軍事的な足場を築くのではないかという懸念がオーストラリアや米国を中心に広がった。同地域はこれまで西側諸国の影響下にあり、中国の進出は戦略的均衡を崩す可能性がある。

中国はまた、台湾と外交関係を持つ国々に対しても影響力を強めている。南太平洋地域には台湾と国交を持つ国がいくつか存在したが、中国はこれらの国々に対して外交承認を取り下げるよう働きかけてきた。実際、2019年にはソロモン諸島とキリバスが台湾との国交を断絶し、中国と国交を樹立した。これは中国の「一つの中国」政策を支持させる動きの一環であり、地域の外交的バランスを変えるものとなっている。

このような中国の動きに対し、米国、オーストラリア、日本などは警戒を強めており、対抗策として経済支援や外交関係の再強化を図っている。米国は長年閉鎖していた南太平洋諸国の大使館を再開し、地域への関与を強めている。オーストラリアも南太平洋諸国との安全保障協力を拡大し、中国の影響力拡大を抑止しようとしている。

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