▽インドのジャンムー・カシミール州で観光客が殺害されて以来、両国間の緊張は一気に高まり、本格的な戦争に発展する可能性も出ていたが、両国は10日、完全かつ即時の停戦に合意した。
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インドのモディ(Narendra Modi)首相は12日、隣国パキスタンとの係争地カシミール地方をめぐる紛争について、「パキスタンは救われたいのであれば、テロリストの拠点を一つ残らず排除すべきだ」と表明した。
モディ氏は国民向けのテレビ演説で、「今パキスタンと話すとしたら、テロに関することだけであり、それ以外の協議には応じない」と語った。
またモディ氏は「パキスタンがテロリストインフラを全て破壊すれば、この問題は前進すると思う」と述べた。
インドのジャンムー・カシミール州で観光客が殺害されて以来、両国間の緊張は一気に高まり、本格的な戦争に発展する可能性も出ていたが、両国は10日、完全かつ即時の停戦に合意した。
この事件はジャンムー・カシミール州近郊の山岳地帯にある観光地で4月22日に発生。正体不明の武装集団が観光客に向けて発砲し、26人が死亡、17人が負傷した。その多くがインド人であった。
インド政府はこの地域に陸軍を派遣し、容疑者を追跡している。
インド政府はこの事件を受け、パキスタン国民に発行したすべてのビザ(査証)を剥奪した。
パキスタンはインドの外交スタッフの削減、両国間で唯一機能している陸上国境の閉鎖、インドとの水共有条約を停止するなどの対抗措置を発表した。
またパキスタンはインドが所有または運営するすべての航空会社の領空への進入を禁じ、インドとの貿易を停止した。インド側も同様の措置を取っている。
インド政府はこの事件にパキスタン政府が関与したと主張しているが、その証拠は示していない。
インド軍は6日未明、パキスタンの統治下にあるカシミールに向けてミサイルを発射。インド国防省はカシミールのテロリストインフラ9カ所を標的にしたと明らかにした。
インド軍参謀本部は11日の声明で、カシミールのテロリストインフラに対する一連の攻撃でイスラム主義組織の指導者を含む100人以上の過激派を殺害したと主張した。
パキスタン政府はこの主張を否定し、犠牲者の多くが民間人であったと主張している。
4月22日のテロ攻撃を起こした武装集団の正体は分かっておらず、捜査が進んでいるかも不明である。
双方はこのミサイル攻撃後、カシミールの境界で激しい銃撃・砲撃戦を繰り広げた。パキスタンは40~50人のインド兵を殺害したと主張している。
両国は陸、空、海におけるすべての軍事行動を直ちに停止することで合意した。
地元メディアによると、過去24時間、カシミールの境界で戦闘は報告されていないという。
パキスタン政府は先週、防空部隊がカシミール上空を飛行していたインド空軍の戦闘機5機を撃墜したと主張。インド軍はこの主張についてコメントしておらず、代わりにパキスタン空軍の戦闘機を複数機撃墜したと主張している。
インドとパキスタンはそれぞれカシミールの一部を管理している。この係争地をめぐる領有権争いが解決する目途は立っていない。
カシミールでは24年9月末頃から暴力事件が急増し、多くの市民が爆弾テロや銃撃戦に巻き込まれてきた。
カシミールの反政府勢力は1989年の武装蜂起以来、中央政府と戦ってきた。カシミールで生活するイスラム教徒の多くがパキスタンへの編入か独立という反政府勢力の目標を支持している。
インド政府は2019年、「歴史的大失態」の是正として、70年間に渡って認めてきたジャンムー・カシミール州の自治権を剥奪した。
ジャンムー・カシミール州はインドで唯一、イスラム教徒が多数派の州であり、ヒンズー政策を推進する政府と何度も対立してきた。
インドは21年、射程5000キロの核搭載可能大陸間弾道ミサイル「アグニ5」の発射実験に成功。これは長距離地対地弾道ミサイルである。
インドは1947年にイギリスから独立して以来、パキスタンと3度の戦争を戦ってきた。これらのミサイルはパキスタンの全国土を射程に収めている。
パキスタンも核保有国であり、中長距離ミサイルの開発を進めている。