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パキスタン外務省が駐イギリス大使を召喚、陸軍司令官への脅迫受け

これは北イングランドの都市で行われた政治集会で、ある女性がパキスタン陸軍のムニール参謀長を自動車爆弾で殺害すると示唆するような発言をしたとみられる動画がインターネット上で拡散したことを受けたものだ。
2025年2月12日/パキスタン、首都イスラマバードの幹線道路(ロイター通信)

パキスタン政府は12月26日、イギリスで開かれた集会で陸軍司令官に対する暴力的な発言があったとして、駐イギリス大使を外務省に呼び抗議した。これは北イングランドの都市で行われた政治集会で、ある女性がパキスタン陸軍のムニール(Asim Munir)参謀長を自動車爆弾で殺害すると示唆するような発言をしたとみられる動画がインターネット上で拡散したことを受けたものだ。

動画は収監中のカーン(Imran Khan)元首相の支持者が開いた集会で撮影されたもので、後に削除されたが、外務省は調査と関係者への法的措置をイギリス政府に求めた。

パキスタン外務省は声明で、「今回の行為は単なる言論の自由の範囲を超える暴力の扇動とみなされ、自動車爆弾を示唆する発言は限度を越えており、表現の自由には当たらない」と述べ、イギリス側に対応を強く要請したとしている。また同省は当該発言がパキスタン軍の最高司令官に対する具体的な脅迫であり、英国法に基づき適切な捜査と処罰が必要だと強調した。

この集会はカーン支持者が中心となって行われたもので、同氏は2022年に不信任決議で失脚し、その後複数の汚職容疑で実刑判決を受けて服役中である。集会が開かれたのはカーン氏とその妻が国家財産の不正保持・販売の疑いで17年の刑を言い渡された直後であり、支持者の間で政府や軍への不満や抗議が高まっている背景があると見られている。

在イギリス・パキスタン大使館は声明で、パキスタン政府が犯罪行為とみなすものがある場合には関連資料をイギリス警察に提出するよう求めた。警察は提出された証拠を審査し、英国法の下での捜査や捜査開始につなげる可能性があるとしている。

この問題はパキスタン国内で政治的緊張が高まる状況と関連している。近年、パキスタン軍とカーン氏の政党PTI(パキスタン正義運動)との間では対立が激化しており、軍報道官がカーン氏を「精神異常」と批判するなど言葉の応酬が続いている。また、多くの支持者はムニール氏がカーン氏の拘束に関与したと主張している。

パキスタン政府は外交的抗議を通じて、このような暴力的発言が国際社会で許されないことを示すと同時に、イギリス側に対して法に基づいた対応を促している。一方で、この事案が両国関係や国内政治情勢にどう影響するかは今後の展開を見守る必要がある。

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