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学校給食で集団食中毒、846人の生徒が腹痛などの症状訴える インドネシア

インドネシアの給食無償化政策は貧困層や農村部の子どもたちに栄養を提供し、教育機会の平等化を目指す重要な施策である。
インドネシア、首都ジャカルタの小学校、給食を食べる生徒(Getty Images)

インドネシア政府が提供する無料の学校給食を食べた生徒800人以上が今週、腹痛などの症状を訴え、一部が病院で手当てを受けている。当局が19日、明らかにした。

インドネシアでは今年1月から学校の給食無償化が始まり、それ以来、4000人以上の生徒が食中毒に見舞われている。

現地メディアによると、西ジャワ州内の5校で17日、前日に提供された鶏肉と米を食べた569人の生徒が吐き気と嘔吐を訴えたという。

ロイター通信は地元当局者の話しとして、「19日時点で、10人の生徒が病院で治療を受けており、他の生徒は回復した」と報じた。

当初は約30人の生徒が入院を余儀なくされた。

中スラウェシ州でも17日、給食を食べた277人の生徒が食中毒の症状を訴え、対象学区の給食の配給が中止された。

直近の食中毒事件では給食センターからノロウイルスが検出されていた。

ノロウイルスは感染力が非常に強い。重症化リスクは高くないが、体力のない高齢者や子供は注意が必要である。

スビアント(Prabowo Subianto)大統領肝いりの「給食無償化」政策は、子どもたちの栄養改善を目指す重要な施策として、国内の教育政策において注目を集めている。この政策は、特に貧困層や農村部の子どもたちが十分な栄養を摂取できるようにするために導入され、学校教育と健康の両面で大きな意義を持つ。

インドネシアでは貧困層の家庭が多く、食事の質や量が不安定な家庭も少なくない。このような背景の中で、子どもたちが学校に通いながら十分な栄養を摂取することは、学習効果を高めるために不可欠だとされている。しかし、貧困層の家庭においては、食事の確保が難しく、学校に通うための食事を準備する余裕がない場合も多い。そこで政府は学校での給食を無償化し、すべての児童に提供することを決定した。

給食無償化政策の目指すところは、まず第一に、教育機会の平等化だ。食事が十分に得られない子どもたちは、学業に集中することが難しく、学習意欲の低下や健康問題を引き起こすことがある。無償給食を提供することで、全ての子どもが同じスタートラインで学べる環境を作り出すことができる。特に、貧困地域や農村部では、家庭の経済状況による教育格差が問題となっており、給食無償化はこの格差を減らす手段として注目されている。

また、栄養面でも大きな効果が期待されている。インドネシアでは栄養不足が深刻な問題となっており、特に子どもたちの成長に必要な栄養素が不足している場合が多い。無償化政策は子どもたちが学校で栄養バランスの取れた食事を摂ることができるようにし、成長期に必要な栄養素をしっかりと補給できるようにすることを目的としている。この政策により、栄養不足やそれに関連する健康問題の予防が期待されている。

実施にあたっては、政府は学校に対して給食提供のための予算を割り当て、地元の農産物を使った食材の調達を推進している。この取り組みは地元経済の活性化にも貢献する。農産物を地元で調達することにより、地域農業の支援となり、地域住民にも経済的な利益をもたらすとともに、輸送コストの削減にもつながる。

しかし、この政策には課題も多い。まず、全国規模で給食無償化を実現するためには膨大な予算が必要であり、特に財政状況が厳しい地域では予算の確保が難しい場合もある。また、給食の質を確保するための管理体制や「衛生面」での対策も重要だ。学校で提供される食事の質が低ければ、子どもたちの健康を守るどころか、逆に問題を引き起こす可能性もある。

さらに、給食の提供にかかわる地域のインフラや食材の供給体制も整備が必要であり、都市部と農村部ではその実施に差が出る可能性もある。特に地方の小規模な学校では給食を提供するための設備が整っていない場合があり、その場合には政府の支援や地域社会の協力が不可欠となる。

インドネシアの給食無償化政策は貧困層や農村部の子どもたちに栄養を提供し、教育機会の平等化を目指す重要な施策である。実施には多くの課題があるものの、その社会的・経済的な影響は大きく、成功すれば他国の模範となる可能性もある。政策の効果を最大限に引き出すためには、今後の継続的な改善と支援が必要不可欠である。

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