◎全豪オープンテニスはビクトリア州メルボルンで1月17日に開幕する予定。ジョコビッチ選手は同大会を9度制している。
1月6日、オーストラリアに入国したセルビアの英雄ノバク・ジョコビッチ選手は、コロナワクチン接種免除の要件を満たしていないという理由で入国ビザを取り消され、途方に暮れた。
ジョコビッチ選手は4日、ソーシャルメディアでオーストラリアのコロナワクチン接種規則の免除を受けたと明らかにしていた。
全豪オープンテニスの会場があるビクトリア州政府によると、大会に出場する選手および関係者は入国前にコロナワクチンを接種するか、独立した専門家委員会にワクチン接種免除を申請し許可を受ける必要があるという。
大会の責任者であるクレイグ・タイリーCEOは5日の声明で、「AUS連邦規制当局のガイドラインに基づき、26人の選手が免除を申請し、一握りが認められた」と明らかにしたうえで、「ジョコビッチ選手は特別扱いされていない」と強調した。
しかし、オーストラリア国境警備隊は6日、世界ナンバーワン選手のビザは入国要件を満たしていないと声明を発表した。
セルビアの極右大統領はオーストラリア当局の対応に懸念を表明した。
アレクサンダル・ヴチッチ大統領は5日にインスタグラムを更新し、空港で拘束されているジョコビッチ選手と話をしたと投稿した。
ヴチッチ大統領は投稿の中で、「セルビア当局は世界最高のテニス選手に対する”嫌がらせ”を可能な限り短い時間で終わらせるよう対策を講じている」と述べたが、オーストラリアは極右の主張を受け入れなかった。
ヴチッチ大統領はコソボ紛争中にジャーナリストを厳しく取り締まったことで有名になった。NGO国境なき記者団やその他の権利団体はヴチッチ政権を権威主義、独裁、非自由主義的民主主義体制と評価し、報道の自由の制限に強い懸念を表明している。
反抗的なヴチッチ大統領は「ノバクは嫌がらせの犠牲者であり、セルビア人は彼を支持している」と投稿したが、オーストラリアは極右の主張に動じずビザを取り消した。
オーストラリア政府のコロナ対策は西側諸国の中で最も厳しく市民の生活に深刻な影響を与えたため、ジョコビッチ選手に対する免除は大いに物議を醸し、政府の専門家委員会とビクトリア州政府は非難の嵐にさらされた。
ワクチン免除申請は2つの独立した委員会によって評価される。オーストラリア放送協会(ABC)によると、免除は心臓病やその他の特定の基礎疾患を持つ人、コロナワクチンを接種し深刻な副反応に見舞われたことがある人、過去6か月以内にコロナに感染し回復した人などに適用される。
ジョコビッチ選手はワクチンを接種したかどうかを明らかにしていないが、昨年4月に「接種を強制されたくない」と述べていた。なお、ジョコビッチ選手は2020年6月にコロナに感染している。
オーストラリア国境警備隊は声明の中で、ジョコビッチ選手は入国に必要な証拠を提供できなかったため、ビザは取り消されたと述べた。「入国時に有効なビザを持っていない、またはビザを取り消された個人は拘留され、強制送還されます...」
スコット・モリソン首相は6日、ジョコビッチ選手を特別扱いしたという主張をあらためて否定し、国の規則を超える人間はいないと強調した。
モリソン首相は記者団に、ジョコビッチ選手が提出した証拠は入国に必要な要件を満たしておらず不十分だったと述べた。
ABCによると、ジョコビッチ選手はビザの取り消しに異議を申し立てる見込みだという。
ロイター通信は、「ジョコビッチ選手はメルボルンの空港からビクトリア州郊外のホテルに連行され、収容された」と報じた。
オーストラリアのグレッグ・ハント保健相は、「ジョコビッチ選手への扱いは厳しいものになったが、公平である」と述べ、政府は入国を適切に管理していると強調した。
しかし、ジョコビッチ選手の母国セルビアではオーストラリアに対する怒りの声が上がった。ジョコビッチ選手の父は地元メディアを通じて、「これはノバクのための戦いではなく、世界の命運をかけた戦いだ」と怒りの声明を発表した。
オーストラリア政府は昨年にも帰国を待ち望んでいた市民数万人より先に金持ちと有名人の入国を許可し、非難の嵐に直面した。
全豪オープンテニスはビクトリア州メルボルンで1月17日に開幕する予定。ジョコビッチ選手は同大会を9度制している。