◎北朝鮮の核兵器は金正恩 党総書記の願いを叶える可能性がある。
10年前、北朝鮮の指導者、金正日(キム・ジョンイル)の訃報が伝えられ、その後まもなく、国営メディアは三男の金正恩を「卓越した指導者」と紹介した。
12月17日に最高指導者就任から10年を迎える金正恩 党総書記はかつてない危機に直面していると考えられているが、厳しい制裁下にあっても核兵器と弾道ミサイルの開発を推進し、西側諸国を挑発し続けている。
韓国の諜報機関が2018年に公表したデータによると、北朝鮮は核兵器を20~60発保有し、毎年核兵器を6~18発製造できる技術を持っている可能性があるという。金正恩は国をひとつにまとめ上げ、核開発を推進すると公の場で何度も宣言し、西側諸国を混乱させた。
韓国の専門家は、北朝鮮の核開発は国連の制裁を打ち破る「魔法の杖」になる可能性があると指摘した。
ソウル大学校 統一平和研究院のキム・テウ氏はAP通信のインタビューの中で、「核兵器は北朝鮮の魔法の杖です」と語った。「北朝鮮は世界で最も貧しい国のひとつですが、核兵器のおかげで立場を維持できています...」
10年前、一部の専門家は当時まだ27歳だった三男坊に北朝鮮をまとめることはできないと予想した。ある専門家は、金正恩は非核化と経済政策を推進する可能性があると主張していた。
しかし、三男坊は潜在的なライバルを粛正し、金正日と建国の父である金日成(キム・イルソン)の系統をしっかり継承した。
韓国のシンクタンク、韓国防衛研究フォーラムが2016年に公表した報告書によると、金正恩は就任以来、少なくとも340人の政敵を処刑または追放したという。金日成の側近のひとりだった張成沢(チャン・ソンテク)は2013年に国家転覆を企てたとして死刑判決を受け、即日処刑された。同じく側近の李容浩(リ・ヨンホ)は2012年に追放されている。
金正恩は父の主要政策をある程度維持してうえで中国とのつながりを強化し、緩やかな経済成長を達成した。
中国は北朝鮮の主要な貿易国であり、食料だけでなく兵器も供給している可能性があると指摘されている。
国の経済をある程度軌道に乗せた金正恩は、これまでに少なくとも地下核実験を4回、大陸間弾道ミサイル実験を3回決行している。
韓国の韓南大学の軍事専門家であるヤン・ウク教授は北の核開発について、「軍の重鎮たちは金正恩の国際的な影響力が弱まっていることに懸念を表明したが、金正恩は核開発を推進することで彼らの懸念を払しょくした」と指摘した。
金正恩は2017年、米国を射程に収めるICBMを持っていると主張し、2018年と2019年の歴史的な米朝首脳会談にこぎつけた。金正恩は同年、韓国の文在寅 大統領と中国の習近平 国家主席とも会談している。
ソウル大学校 統一平和研究院のキム・テウ氏はAP通信に、「核兵器は金正恩の外交的地位を押し上げ、多くの国民が彼を神格化した」と語った。「核兵器は金正恩の力を強化し、国民は国営メディアが報じるプロパガンダを信用しました...」
北朝鮮の核開発は金日成が原子力研究所を創設した1950年代に始まったと伝えられている。1994年に権力を受け継いだ金正日は、北朝鮮初の地下核実験と大陸間弾道ミサイル実験を行い、朝鮮半島統一という夢を叶えるために核開発を加速させた。
韓国のシンクタンク、韓国防衛研究フォーラムの責任者であるチョン・チャンウク氏は、「金正恩は自分の強さを世界に誇示したいと思っている」と述べた。「金正恩は言います。私は若いですが、見くびらないでください...」
またチャンウク氏は、「金正恩は国民がどれだけ飢えようと、核兵器を放棄するという道は選ばないだろう」と指摘した。「核兵器を失えば権力を失います。金正恩は諦められないでしょう」
キム・テウ氏によると、中国とロシアは国連の制裁の影響で北朝鮮が「壊滅」することを防ぐために、ひそかに財政支援を行っているという。しかし、安全保障理事会の常任理事国である両国は、北朝鮮と違法な取引を行ったことはないと主張している。
北朝鮮の食糧不足は極めて深刻と伝えられているが、実態はほとんど明らかにされていない。
1994年から1998年頃に発生した大飢饉では、市民200万~350万人が餓死または栄養不足に関連する病で死亡したと推定されている。