北朝鮮「非核化主張やめれば米国と対話できる」=国営メディア
北朝鮮の核開発は冷戦期から始まった長期的な国家戦略であり、体制維持と安全保障の核心を成している。
と北朝鮮の金正恩党総書記(ロイター通信).jpg)
北朝鮮の金正恩(Kim Jong Un)党総書記は米国が核兵器廃棄の主張をやめれば、対話に応じる可能性があると示唆した。国営朝鮮中央通信(KCNA)が22日に報じた。
それによると、キムは21日に開かれた最高人民会議の演説で、米国が核放棄の主張を止めれば、米国との対話を避ける理由はないと述べたという。
またキムはトランプ(Donald Trump)米大統領を今でも懐かしく思っていると述べたとのこと。両首脳は第1次トランプ政権時に3回会談している。
KCNAはキムの発言を引用し、「米国が、我々の非核化という不条理な執着を捨て、現実を受け入れ、真の平和的共存を望むのであれば、我々が米国と対話しない理由はない」と報じた。
またキムは「米国と韓国からの深刻な脅威に直面する中、自国の安全を守るために核兵器を開発することは、国家の存亡にかかわる問題である」と述べた。
さらに、「我が国を弱体化させ、体制を破壊するという根本的な意図は変わっていないため、米国と韓国が最近行った対話への働きかけは不誠実であるとして拒否した」と強調した。
そしてキムは、北朝鮮の核開発計画を段階的に終了させるという韓国の提案がその証拠であるとした。
北朝鮮の核開発は冷戦期から始まった長期的な国家戦略であり、体制維持と安全保障の核心を成している。1950年代、朝鮮戦争後にソ連から原子力技術を導入したことが出発点で、1960年代には寧辺(ヨンビョン)に原子炉研究施設を建設し、核燃料サイクルの基盤を整えた。1980年代には黒鉛減速炉の建設が進められ、使用済み燃料からプルトニウム抽出が可能となったことで、核兵器開発の現実性が高まった。
1990年代初頭、国際原子力機関(IAEA)の査察で核開発の疑惑が表面化し、1994年には米朝枠組み合意が結ばれ、北朝鮮は寧辺の施設凍結と引き換えに軽水炉建設支援を受けることになった。しかしこの合意は2000年代に入り崩壊し、北朝鮮は本格的に核兵器開発へ舵を切った。
2006年には初の地下核実験を実施し、その後も2009年、2013年、2016年、2017年と実験を繰り返し、威力と技術を向上させてきた。特に2017年9月の実験では水素爆弾と主張する高威力核兵器を爆発させ、実際に数百キロトン級の破壊力を持つと推定された。また、弾道ミサイル技術と組み合わせることで、核兵器の実戦的運用能力を確立する段階に至った。大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」「火星17」などは米本土を射程に収める可能性があり、これは北朝鮮にとって最大の抑止力となっている。
北朝鮮の核開発の背景には、体制の生存保障と対外交渉力の強化がある。通常戦力では米韓連合軍に劣勢であるため、核兵器が唯一の対等カードとされている。また、核を外交カードとして用いることで、経済制裁の緩和や援助を引き出す戦略も取られてきた。
一方で、国際社会は北朝鮮の核開発を強く非難し、国連安全保障理事会は度重なる制裁決議を採択した。これにより北朝鮮経済は大きな打撃を受けているが、体制は核開発を放棄せず、むしろ国内的には「核保有国」としての地位を正当化している。
現状、北朝鮮は核弾頭を数十発規模で保有していると推定され、核小型化やミサイル搭載の実用化も進んでいるとされる。これにより北東アジアの安全保障環境は不安定化しており、米国・韓国・日本の防衛戦略にも大きな影響を与えている。今後も北朝鮮の核開発は、国際政治における最大の不安定要因の一つであり続けるだろう。