◎キムは米本土を射程に収めるICBM(大陸間弾道ミサイル)、日本と韓国の脅威になり得る短距離ミサイル、そして核開発を推し進めている。
北朝鮮の金正恩 党総書記は30日、場合によっては敵対勢力に対する先制核攻撃も辞さないという姿勢を示した。
朝鮮中央通信によると、キムは軍高官に25日の軍事パレードを称賛する電話をかけた際、核開発の継続を協調し、「敵対勢力のエスカレートする脅威とすべての危険な試みを封じ込めるために、必要に応じてそれらを先制攻撃で徹底的に封じ込め、挫く」と確固たる意志を表明したという。
キムは米本土を射程に収めるICBM(大陸間弾道ミサイル)、日本と韓国の脅威になり得る短距離ミサイル、そして核開発を推し進めている。
朝鮮中央通信は、電話会談が行われた日を明らかにしていない。
キムは米国に核保有を認めさせ、国の経済をガタガタにした厳しい制裁を解除させるために、核兵器を使った瀬戸際外交を行っている。25日の朝鮮人民軍創設90周年を記念するパレードもそのひとつであり、キムは敵を全滅させるために、あらゆる方法を駆使して力を強化するよう軍に命じた。
またキムは数千人の兵士と観客に「速やかに核戦力を確立する」と約束した。
さらに、核兵器の使用については、「核武力の基本使命は戦争を抑止することだが、北朝鮮の根本利益を侵奪しようとするなら、二つ目の使命を決行せざるを得ない」と述べ、国が脅かされれば核兵器を使うと示唆した。
これらの発言は米国、日本、そして隣国の宿敵韓国への圧力を高めつつ、挑発的な兵器実験を継続することを示唆している。
韓国ではまもなく保守派の新政権が発足する予定。次期大統領の尹淑烈(ユン・ソギョル)氏は北朝鮮政策の見直しと防衛強化を約束している。
韓国の専門家によると、キムのいう安全保障と国の利益は極めてあいまいであり、これらの脅しは米日韓にさらなる懸念をもたらす可能性が高いという。
北朝鮮はこの4カ月で少なくとも13回ミサイル発射実験を決行し、約5年ぶりにICBMの実験も行った。
国連安全保障理事会はロシアのウクライナ侵攻をめぐってひどく分裂しており、キムはこの機を狙って兵器開発を加速させると予想されている。
また韓国政府によると、北朝鮮は2017年に部分的に解体したとされる核実験場のトンネルを再建している可能性がある。
一部の専門家は、5月21日に予定されているユン次期大統領とジョー・バイデン大統領の首脳会談前に地下核実験を行う可能性があると指摘している。
キムの妹である金与正(キム・ヨジュン)も今月初めに先制核攻撃の可能性に言及している。ヨジュンは韓国国防相を「クズのような男」と呼び、挑発が続くようであれば核兵器で南の通常戦力を全滅させると警告した。
ユン氏は選挙期間中、韓国軍の先制攻撃能力とミサイル防衛の強化に繰り返し言及し、米国との同盟関係を確固たるものにすると約束している。
キム兄妹の核戦力に関する発言に注目が集まる一方で、北朝鮮は2019年以降、日本と韓国の脅威になり得る短距離ミサイルも強化している。
キムはそれらを「戦術兵器」と表現しているが、核弾頭を搭載できるかどうかは不明である。韓国の専門家は、それらを戦術兵器と呼ぶことで、「北朝鮮は太平洋地域に展開している米軍、韓国軍、そして日本の自衛隊にいつでも戦術核兵器を撃ち込める」と圧力をかけていると指摘する。
一部の専門家は、「北は次の核実験後、短距離ミサイルや極超音速ミサイルなどに搭載できる小型核弾頭を作ったと主張するかもしれない」と指摘している。
ソウルの梨花女子大学のイーズリー教授はAP通信のインタビューの中で、「北の短距離固体燃料ミサイルは、隠して移動したり素早く発射したりすることが容易で、先制攻撃に向いている」と述べている。
「戦術核弾頭を搭載できる短距離ミサイル、潜水艦によるミサイル発射実験、より高性能なICBMへの野心を合わせると、金正恩は核抑止力ではなく攻撃に焦点を合わせているように思えます。それを実現させ、軍拡競争で韓国を出し抜き、米国に制裁の見直しと韓国との安全保障協力を縮小するよう迫るかもしれません」