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北朝鮮・金正恩が建造中の原子力潜水艦を視察=国営メディア

金正恩 党総書記が建造中の原潜を視察。その写真や映像を公開し、艦体がほぼ完成に近い状態であることを示した。
2025年12月25日に北朝鮮メディアが公開した写真、原子力潜水艦とされる潜水艦(KCNA/AP通信)

北朝鮮が原子力潜水艦の建造において目立った進展を示している。国営朝鮮中央通信(KCNA)が25日に報じた。

それによると、金正恩(Kim Jong Un)党総書記が建造中の原潜を視察。その写真や映像を公開し、艦体がほぼ完成に近い状態であることを示した。

北が建造を進めている潜水艦は約8700トン級とされ、核・ミサイル搭載能力を持つ「戦略誘導弾潜水艦」と称されている。専門家は、この種の艦艇は北東アジアの安全保障環境に大きな影響を及ぼし得ると指摘する。

KCNAによると、キムは造船所で原潜の進捗状況を視察し、工事の加速と完成に向けた指示を出したとされる。またキムはこの原潜が「海軍の核武装化における重要な戦略的資産」であると強調し、韓国が米国と共同で原潜を導入する動きを「脅威」と非難した。北は他国の原潜建造計画に対抗するためにも自国の原潜能力を強化する必要があると主張している。

今回の公開は北が2025年3月に原潜建造計画を初めて明らかにして以降の最新の動きである。北はこの原潜に搭載可能なミサイルや核兵器について具体的な説明はしていないが、搭載の可能性を示唆していることから地域での懸念は高まっている。通常、原潜は長期間の潜航能力を有し、敵からの探知を困難にするため、核抑止力のひとつとして重要視される。

一方で、国外の安全保障専門家は北の技術能力に疑問を呈している。核推進炉の開発や潜水艦用機材の製造には高度な技術と複雑な供給網が必要であり、北が独自にこれらを確立できるかについては懐疑的な見方もある。特に原潜用の原子炉設計や建造ノウハウは高度な専門性を要し、北はこれまで原子力発電所や潜水艦用原子炉の実運用実績がないとの指摘もある。

北は軍事力強化の一環としてこの原潜を位置付けている。キムは視察の際、韓国や米国の海軍力拡充を念頭に置き、自国の防衛力強化の必要性を強調したと報じられている。また同日、北は新型の長距離対空ミサイルの試射も行い、これに成功したという。これらの軍事活動は朝鮮半島をめぐる緊張が依然として高水準にあることを示すものであり、国際社会の懸念が高まっている。

米国や韓国、日本など周辺国は北朝鮮の核・ミサイル計画を厳しく監視しており、原潜の進展に対しても警戒感を強めている。原潜は核戦力の海上展開を可能にし、攻撃手段としての抑止力を強化する一方で、その配備は地域の軍拡競争をさらに助長する可能性がある。国連安全保障理事会は過去に北の核兵器開発や弾道ミサイル発射を非難する決議を採択しており、今回の動きが国際的な圧力や制裁の対象となるかも焦点の一つとなる。

北が原潜の建造計画をどの程度の速さで進め、実戦配備に至るかは不透明であるものの、同国の軍事能力強化の象徴的な動きとして、今後の展開が注目される。国際社会は引き続き情勢の推移を注視する構えだ。

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