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ミャンマー軍が西部の総合病院を空爆、34人死亡、80人負傷

国軍は同州で勢力を拡大する反政府ゲリラ「アラカン軍」が支配する地域内の総合病院を空爆したという。病院には患者や医療スタッフが滞在していたとされる。
2025年12月11日/ミャンマー、西部ラカイン州、軍の空爆を受けたとみられる病院(AP通信)

ミャンマー西部ラカイン州で10日夜、国軍によるとされる病院への空爆があり、34人が死亡、約80人が負傷した。地元関係者や独立系メディアが12日に報じた。

それによると、国軍は同州で勢力を拡大する反政府ゲリラ「アラカン軍」が支配する地域内の総合病院を空爆したという。病院には患者や医療スタッフが滞在していたとされる。

AP通信は関係者の話しとして、「12月10日の午後9時13分ごろに戦闘機が2発の爆弾を投下した」と報じた。1発は病院の回復病棟を直撃、もう1発は病院本館付近に落下したという。

この空爆で男性17人と女性17人の死亡が確認され、建屋の大部分が損壊。付近に止めてあったタクシーやバイクなどの車両も被害を受けた。

オンライン上に投稿された写真や映像には、破壊された建物や散乱した医療機器などが映し出され、爆撃の激しさを物語っている。この病院はラカイン州で唯一の主要な医療提供施設であり、内戦により多くの病院が閉鎖される中で住民の健康を支えてきた。

地元メディアによると、この病院には地元の医師たちが集まり、最近業務を再開したばかりだったという。

アラカン軍はラカイン民族の自治を求める武装組織で、2023年11月以降、州内で攻勢を強め、要衝や軍司令部拠点などを掌握している。この病院は最大都市ヤンゴンの北西約530キロに位置し、アラカン軍が実効支配する地域の中心部にある。

国軍はこの空爆についてコメントを出していない。

一方、民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」はこの空爆を強く非難し、国際社会に対し軍事政権への圧力強化や責任追及を求める声明を出した。

この病院は戦時下の医療供給を支える重要な施設であったため、市民や医療関係者からは軍による公共インフラへの攻撃を許さないよう求める声が上がっている。

ミャンマーでは2021年の軍事クーデター以降、広範な武装抵抗と軍政による弾圧が続き、各地で空爆や地上戦が続いている。病院や学校など民間インフラが標的となるケースも増え、国連や国際人権団体からは国際人道法に基づいた民間人保護を求める声が出ている。今回の爆撃は人道危機の深刻さを改めて浮き彫りにした。

この空爆を受け、国際的な人権団体や援助団体は現地の医療支援体制の再構築を急ぐ必要性を訴えているが、戦闘の激化で現地へのアクセスが困難な状況が続いている。総選挙を控えるミャンマー情勢は不透明さを増しており、民間人の安全確保と地域の安定化が喫緊の課題となっている。

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