ホステル放火殺人事件、被告に有罪評決、5人死亡 ニュージーランド
この事件は23年5月16日未明、ウェリントン中心部にあるローファーズ・ロッジというホステルで発生した。
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ニュージーランドの裁判所は26日、首都ウェリントンのホステルで23年5月に発生した放火殺人事件の被告に有罪評決を言い渡した。
この事件は23年5月16日未明、ウェリントン中心部にあるローファーズ・ロッジというホステルで発生した。
火災は現地時間およそ午前0時半に始まり、建物全体に急速に広がった。ホステルは長期滞在者や短期旅行者、高齢者や生活困窮者など多様な背景を持つ人々が利用しており、常時90人以上が暮らしていたとされる。
火災発生時には多くの人々が建物内にいたため避難は混乱し、結果として5人が死亡、数十人が負傷した。
現場はウェリントンのニュータウン地区に位置し、4階建ての建物で、部屋は簡素で安価に提供されていた。火災当時、煙が短時間で各階に充満し、多くの入居者が窓から脱出を試みた。中には窓から飛び降りて怪我を負う者もおり、消防隊ははしご車を使って多数の住民を救出した。現場に駆けつけた消防隊員は「キャリア最大の惨事」と表現し、消火活動と救助活動が並行して行われた。
火災の原因については当初不明とされていたが、その後の捜査で放火の疑いが浮上。警察は事件として調査を進め、数日後に容疑者を逮捕した。
ホステルにはスプリンクラーが設置されておらず、防火体制の不備が被害拡大につながったのではないかと指摘された。建物は安全基準を満たしているとされていたが、長期的な居住を前提とした十分な安全管理はなされていなかった可能性がある。
この火災はニュージーランド社会に大きな衝撃を与えた。犠牲者の多くは低所得層や弱い立場に置かれた人々であり、社会的な不平等や住宅問題を象徴する出来事と受け止められた。
ウェリントン高等裁判所の陪審員はエサロナ・デイビッド・ロロガ(Esarona David Lologa)被告の無罪主張を退けた。
被告は5週間に及ぶ裁判期間中、氏名非公表の措置を受けていたが、有罪判決を受けこの命令は解除された。
検察側は被告が放火した当時、統合失調症を患っていた事実を認めた。しかし火災を起こしたのは精神疾患のためではなく、他の宿泊施設への移住を望んだためだと主張した。
弁護側は被告が火をつけたことを否定しなかったが、心神喪失を理由に無罪を主張していた。
判決は11月に言い渡される予定である。
当局は今年6月、ローファーズ・ロッジの運営責任者を含む4人を過失致死罪で刑事告発した。公判日は決まっていない。
地元メディアによると、今回の裁判中、検察が呼んだ証人の一部はこの建物の防火体制を「皆無」と評し、「死の罠が張り巡らされていた」と述べたという。