◎フライン氏率いる反乱軍は2年前の2月1日にアウンサンスーチー氏ら文民指導者を追放し、軍事政権を発足させた。
ミャンマーの軍事政権は1日、2年前に発令した非常事態宣言を延長すると発表した。これにより、今年予定されている議会選も先延ばしされることが確実となった。
ミャンマー国営放送(MRTV)によると、フライン(Min Aung Hlaing)司令官は先月31日に開かれた安全保障会議で民主的かつ平和な選挙を実施するためには時間が必要とし、宣言を半年延長したという。
安全保障会議は憲法上は行政機関のひとつだが、軍の管理下に置かれている。
フライン氏は議会選の日程を示していないが、今年8月に行う可能性があると示唆している。MRTVは「選挙は地域の安全と平和が確立された後に行われるだろう」と報じた。
フライン氏は現在、立法、司法、行政の全権限を手中に収めている。
フライン氏率いる反乱軍は2年前の2月1日にアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)氏ら文民指導者を追放し、軍事政権を発足させた。
専門家は非常事態宣言の延長について、「軍は非暴力の抗議デモや不服従運動を含む、反政権派の挑戦的な抵抗を鎮圧できなかったと認めた」と指摘している。
MRTVによると、31日の安全保障会議では反政権派による暗殺、爆破テロ、公共施設の破壊などへの対応も協議されたという。
憲法は選挙を行うにあたり、「軍は投票日の6ヶ月前にその権限を安全保障会議の長(大統領)に移譲しなければならない」と規定しており、軍が憲法に従えば、フライン氏は国軍出身であるミン・スエ(Myint Swe)大統領代行に権限を引き継ぐこととなる。
しかし、地元の一部の独立系メディアは、「殺し屋集団に憲法もクソもなく、反政権派は軍に勝利するまで武器を置かないだろう」と報じている。
元議員などで構成される国家統一政府(NUG)の報道官は1日、「軍はクーデター記念日に支配を確固たるものにすると予想されていたため、延長は驚きではない」と声明を出した。
報道官はフェイスブックなどに投稿した声明で、「NUGとその同盟組織は国民の支持を得ており、戦いは革命を達成するまで続くだろう」と述べている。
軍は2020年11月の総選挙でスーチー氏らが不正を働いたと主張しているが、選挙監視団は不正を確認していない。この選挙でスーチー氏の与党・国民民主連盟(NLD)は軍の支援を受ける野党に大勝した。
専門家たちは軍事政権下の選挙に意味はなく「時間の無駄」「自由も公正もない茶番」になると指摘している。スーチー氏は軍に汚名を着せられ、秘密軍事裁判で禁固33年を宣告されている。
ミャンマーの人権団体、政治犯支援協会(AAPP)によると、軍事クーデター以来、政府高官を含む1万6600人以上が逮捕され、少なくとも1万3000人が収監されたか不当に勾留されているという。一連の弾圧で虐殺された市民は3000人近くに達した。