◎首都ネピドーでは国勢調査員が治安部隊と一緒に民家を一軒一軒回った。
軍事政権の支配下に置かれるミャンマーで1日、国勢調査が始まった。
軍政は来年予定されている総選挙に必要な有権者リストを作るためと説明している。
しかし、国土の大部分を占領した反体制派はこれを軍政による情報収集とみなし、徹底抗戦を表明している。
首都ネピドーでは国勢調査員が治安部隊と一緒に民家を一軒一軒回った。
ミャンマー国営放送(MRTV)は1日夕方、国内すべての地域で国勢調査を実施すると報じた。
反体制派を率いる民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」は国民に対し、調査に応じないよう呼びかけている。
軍政は先週、反体制派に対し、武器を置き、和平に向けた対話に応じるよう呼びかけたが、NUGはこれを一蹴。「市民を虐殺した軍政に選挙を実施する権限はない」と断じた。
NUGは1日の声明で、「軍指導部は偽の選挙、国民を恐怖に陥れるために国勢調査を実施している」と非難した。
またNUGは「軍評議会に協力する者はすべて処罰される。それは軍のテロ活動を奨励し、協力することに他ならない」と警告した。
他のゲリラも情報収集に協力した者は報復を受けると警告している。
チン州の反体制派「チン民族戦線(CNF)」は先月の声明で、「調査に参加する軍関係者に対し、強力な措置を取る」と警告。さらなる攻撃を示唆した。
ゲリラは昨年1月に行われた軍の調査も妨害し、2人の警察官を含む少なくとも12人を殺害、陸軍兵士4人を拘束している。
北東部シャン州の大部分を支配した「MNDAA(ミャンマー民族民主同盟軍)」、西部ラカイン州の「アラカン軍」、東部カレン州の少数民族ゲリラ「カレン民族同盟(KNU)」、チン州のCNFなどからなる民主派勢力は昨年10月、中国国境に近い北部で反攻を開始。複数の地域から国軍を追い出した。
これらの反体制派はNUGおよび人民防衛軍(PDF)と連携し、国土の半分以上を掌握。軍政に圧力をかけている。
ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると、21年2月のクーデター以来、治安部隊は少なくとも5706人の市民を殺害し、2万1000人近くを拘束したという。