ミャンマー軍事政権、総選挙前に大規模恩赦へ=国営メディア
軍当局は刑法第505条(扇動罪)で有罪判決を受けた3085人に対し恩赦を与えると決定。加えて、同罪などで起訴中または拘束下にある約5580人に対して告訴取り下げも同時に行われる。
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ミャンマーの軍事政権は28日、年末に予定されている総選挙を前に、政治犯に対する大規模な恩赦を実施すると発表した。
ミャンマー国営放送(MRTV)によると、軍当局は刑法第505条(扇動罪)で有罪判決を受けた3085人に対し恩赦を与えると決定。加えて、同罪などで起訴中または拘束下にある約5580人に対して告訴取り下げも同時に行われる。
合わせて約8600人余りが対象となる予定だ。
恩赦対象のうち、724人は条件付き釈放であり、将来再度違法行為を行った場合には残刑と新たな刑が科される見通し。
釈放の具体的な開始時期は明らかにされていない。過去の恩赦では数日を要したこともある。
軍政は恩赦の理由について、「すべての有権者が投票の機会を失わず、自由かつ公平に投票できるようにするため」と説明。選挙を多党制の民主的な総選挙として位置づけ、有権者の参加を確保する狙いがあると述べた。
しかし、この恩赦と起訴取り下げは、あくまで“表向きの寛大さ”とみられる。
反対派や人権団体は報道の自由が制限されている状況、かつ多くの批判者が引き続き拘束されている点を指摘し、今回の選挙が自由かつ公正に実施されるとは考えがたいと批判してきた。
特に2021年のクーデターで拘束された多数の政治犯、アウンサンスーチー(Min Aung Hlaing)氏ら民生指導者が解放される可能性はほぼゼロである。
支援団体によると、現在も2万2700人以上の政治犯が軍の拘束下にあり、スーチー氏のような主要な反対派リーダーの釈放はこれまで実現していない。
今回の動きは、過去にも宗教祭日や祝祭日などを機に行われてきた恩赦のひとつであるが、こうした節目に釈放されるのは主に軽微な容疑の者で、重要な政治犯や批判者は対象外となってきた。
今回もその延長線上と見られており、根本的な政治状況の改善にはつながらないとの見方が強い。
一方で、軍政側は先月、非常事態宣言を解除し、総選挙実施に向けた動きを加速させている。今回の恩赦は、その一環と位置づけられ、国際社会や国内に向けて「選挙準備を整えている」というアピールとみられる。
しかし、メディア統制、政党の解散、反対派リーダーの拘束などが続く現状を鑑みれば、この恩赦だけで「選挙の自由・公正性」が保証されると判断するのは難しい。多くの懸念は依然残り、恩赦が実際どの程度の意味を持つのかは今後の展開次第だ。
