◎釈放した囚人の中には、「仏教ビンラーディン」と呼ばれる保守的な民族主義の僧侶と、2017年にアウンサンスーチー氏を拘束するために政府顧問を殺害した危険人物が含まれている。
◎国連人権理事会は2月12日の特別会合で、アウンサンスーチー氏らの解放を求める決議案を可決した。
2021年2月12日 AP通信/ミャンマー、マンダレー

現地メディアによると、ミャンマーを支配した軍事政権は23,000人以上の囚人に減刑を与え、釈放したという。

釈放された囚人の中には、「仏教ビンラーディン」と呼ばれる保守的な民族主義の僧侶と、2017年にアウンサンスーチー氏を拘束するために政府顧問を殺害した危険人物が含まれている。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は12日の声明で、囚人の釈放を取り消すよう求めた。

アウンサンスーチー氏と国民民主連盟(NLD)の高官の解放を求める抗議者たちは、ミャンマーの誕生を記念するユニオンデー(2月12日)抗議を決行した。

スーチー氏とNLDは数十年に渡る軍事政権との戦いの末、2011年に民政移管を達成した。

NLDは昨年11月の議会選挙で軍の支援を受ける野党に圧勝したが、軍は選挙結果に異議を唱え、選挙委員会に調査を要求した。しかし、同委員会は先月末に調査結果を公表し、軍の主張を却下している。

数万人規模の抗議集会は1週間以上続いており、13日と14日にはさらに多くの抗議者が集結すると予想されている。現地メディアによると、ミャンマーのほぼすべての主要な町の公務員と労働者が抗議集会に参加しているため、多くの中小企業が活動を停止しているという。

囚人の釈放は軍事クーデターの常套手段のひとつである。一部の抗議者は囚人が暴力を掻き立てるために利用される可能性があると警戒している。

最大の都市ヤンゴンの抗議集会に参加した27歳の女性は、「私は民主主義を取り戻すためなら、自分の命を危険にさらすことをいとわないです」と語った。

「ミャンマーを変える時が来ました。私は私たちの世代のために、みんなのために戦います...私は助けを必要としています。暗黒の時代には戻りたくありません

2021年2月4日 AP通信/ミャンマー、首都ネピドー

抗議者約100人とヤンゴンの米大使館近くで抗議したミャエ・アウン氏は現地メディアの取材に対し、「民主主義の素晴らしさを知った若い世代は、軍事政権に抵抗する準備ができている」と語った。

ミャエ・アウン氏:
「(1988年の蜂起などで)非常に多くの市民が軍隊に殺されました。しかし、今回は暴力は許されません。私たちは虐殺を許しません」

「私たちは世界の注目を集めたいと考えています。力には頼らず平和的に抗議します。軍と警察は何もできません」

最高指導者のミン・アウン・フライン司令官は野党を鎮圧するためにインターネットアクセスを遮断し夜間外出禁止令を発効したが、抗議者たちは集団で行動し、命令には屈しない姿勢を見せている。

現地メディアによると、軍事政権はインターネットプロバイダーにユーザーの個人情報を強制開示させるインターネットセキュリティ法案を作成している最中だという。

フェイスブックは今週、同社に情報の拡散を防ぐよう要請した軍事政権のアカウントを凍結した。

フェイスブックは声明で、「ミャンマーの市民が自分を表現する権利、情報を発信する権利、政治演説する権利を保護すると誓約する」と発表した。

アメリカのジョー・バイデン大統領は今週、軍事政権に関連する者に制裁を科す大統領令に署名した。バイデン大統領はナンシー・ペロシ下院議長宛ての書簡の中で、「政府はミャンマーの軍事クーデターを国家安全保障と外交政策への脅威と見なす」と説明した。

ホワイトハウスは声明で、「ミャンマー軍による権力の掌握、アウンサンスーチー氏と他の文民当局者の拘束、および国家非常事態宣言は、国の民主化への移行と法の支配に対する直接の攻撃である」と述べた。

国連人権理事会は2月12日の特別会合で、アウンサンスーチー氏らの釈放を求める決議案を可決した。

これはイギリスとEUが提示した当初の決議案から「ミャンマーを精査する国連の権利専門家の能力強化と、軍の拘束要求」を削除したものである。なお、当初の決議案は中国が拒否権を行使したため、却下されている

<国連人理事会の要求>
・アウンサンスーチー氏、ウィンミン大統領、および他の政府高官の即時かつ無条件の釈放。

・インターネット制限の解除。

・平和的な集会を尊重し、国民に対する過度な力の使用を控える。

中国国連大使の陳徐 氏は「私たちの勧告の採用に感謝する」と述べる一方、中国は世界の制裁措置とは距離を置いているとけん制した。

国連人権理事会に制裁を科す権限はないが、権力の乱用と違反についての公式声明を発表することで、世界の注目をミャンマーに集めることができる。決議案の見直しはバイデン政権が同理事会への復帰を発表した直後に実行された。

国連のステファン・ドゥジャリック報道官は決議の採択を「非常に重要なステップ」と呼び、「国際社会は、ミャンマーで起きた出来事の逆転を求め、民主主義を尊重するよう強く表明するだろう」と語った。

ステファン・ドゥジャリック報道官:
「武力の不均衡な使用、実弾の使用...これらはすべて容認できない」

国連のミャンマー人権特別報告者のトム・アンドリュース氏は、アントニオ・グテーレス事務総長とミシェル・バチェレ国連人権責任者に、「ミャンマーに提供する支援、資源、専門家を強化」するよう求めた。

一方、ロシア国連大使のジェナディ・ガティロフ氏は、「ミャンマー情勢をめぐる誇大宣伝は至急停止しなければならない」と述べている。

中国とロシアはミャンマー軍のクーデターを「国内問題」「政権交代」と呼んだ。

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