ミャンマー軍のサイバー犯罪摘発作戦続く、効果に疑問も
軍政は「オンライン詐欺を根絶する」との方針を掲げ、12月にはハイレベルの作業部会を設置するなど対策を打ち出している。
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ミャンマーの軍事政権は国際的なサイバー犯罪対策の圧力を受け、オンライン詐欺に対して「ゼロトレランス(容赦なし)」政策を打ち出し、摘発を強化している。しかし、現実には膨大な規模の詐欺活動が依然として続いている。
軍政は10月、タイ国境に近い悪名高い詐欺拠点「KKパーク」に対して大規模な捜索と爆破を含む作戦を実施し、その後もいくつかの詐欺拠点への襲撃や建物の取り壊しを行ったと発表した。
軍は摘発の成果として、衛星インターネット端末「スターリンク(Starlink)」の押収などを強調し、詐欺行為の根絶を目指す姿勢を国営メディアでアピールした。
軍政は「オンライン詐欺を根絶する」との方針を掲げ、12月にはハイレベルの作業部会を設置するなど対策を打ち出している。これにより、関連する広報活動が国内外で大々的に報じられ、軍政が問題解決に本気で取り組んでいるとの印象を演出している。
だが、調査や衛星画像の分析では、KKパークを含む多数の建物が部分的な損壊のまま残っており、全面的な破壊や機能停止には至っていない可能性が指摘されている。政府が「413棟を取り壊した」と発表した建物の多くは屋根や内部構造がそのまま残っており、再建や再利用の余地を残しているとの分析もある。
さらに、国連薬物犯罪事務所(UNODC)のデータによると、これまでに7000人以上の詐欺センター従業者が解放されたとされる一方で、詐欺活動自体は継続しているとの報告がある。衛星画像を基にした分析では、タイ国境地域に点在する約30カ所の詐欺施設のうち14カ所で建設や拡張の動きが確認され、産業としての勢いは衰えていないという。
摘発が「表面的」に進んでいる背景には詐欺ネットワークと軍・武装勢力との癒着があるとの指摘もある。多くの詐欺拠点はカレン族などの武装勢力が管理する地域に立地し、軍と連携関係にあるとされる。こうした政治的・治安的な複雑さが、持続的な取り締まりを困難にしているとの見方が出ている。
一方で、摘発の影響で詐欺センター従業者たちが他の拠点や海外へ移動するケースも相次いでいる。現地で活動していた詐欺労働者の一部はカンボジアやアフリカなどに移され、テレグラムなどのSNSを使った新たな求人広告も増加している。こうした動きは摘発が単に場所を移すだけに終わっている可能性を示唆している。
またスターリンクについては、米スペースXがミャンマー国内でのサービスを遮断したにもかかわらず、少なくとも一部の詐欺拠点ではインターネット接続手段として引き続き利用されているとの報告もあり、詐欺業界がインフラ面でも適応を続けていることがうかがえる。
専門家らはミャンマーの「ゼロトレランス」政策が実質的な効果を発揮するには、詐欺の首謀者や資金源を徹底的に摘発するとともに、国際的な協力の下で人身売買やサイバー犯罪ネットワーク全体への対処が不可欠だと指摘している。しかし現状では、軍政の摘発が政治的なパフォーマンスに終始し、問題の根本的な解決にはほど遠いとの懸念が強まっている。
