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内戦続くミャンマー、軍事政権トップが大統領就任


ミャンマーの大統領は議会による間接選挙で選ばれる仕組みで、上下両院と軍代表がそれぞれ候補を指名し、最終的に投票で決定される。
2016年5月6日/ミャンマー、アウンサンスーチー氏(左)とフライン総司令官(AP通信)

ミャンマーで2021年の軍事クーデターを主導し、同国を内戦状態へと陥れた軍事政権トップのフライン(Min Aung Hlaing)総司令官が今月、大統領に就任する見通しとなった。形式上は民政移管の一環とされるが、実態は軍の支配を維持するための体制再編との見方が強い。

同氏は2021年2月、民主的な選挙で選出されたアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)氏率いる国民民主連盟(NLD)を打倒するためクーデターを実行し、全権を掌握した。その後、抗議デモの弾圧や反軍勢力との戦闘が激化し、現在も全土で内戦が続いている。このクーデター以降、数千人が死亡し、数百万人が避難を余儀なくされるなど、深刻な人道危機が続いている。

今回の大統領選出は2025年末から26年初頭にかけて実施された総選挙を受けたものだが、この選挙自体が国際社会から強い批判を受けている。軍系政党が圧倒的多数の議席を確保した一方、主要な民主派勢力は選挙に参加できず、公正性に疑問が呈されている。

ミャンマーの大統領は議会による間接選挙で選ばれる仕組みで、上下両院と軍代表がそれぞれ候補を指名し、最終的に投票で決定される。軍は議会内に一定数の議席を憲法上確保しているうえ、今回の選挙で軍系勢力が大半を占めたため、フライン氏の当選はほぼ確実視されている。

同氏は大統領就任に向け、長年務めた司令官の職を退任し、側近である将軍を後任に指名した。これにより、表向きは文民統治へ移行する形をとるが、実際には軍との強固な関係を維持し続けるとみられている。専門家は「制服を脱いでも実質的な権力構造は変わらない」と指摘する。

一方で、国内情勢は依然として不安定である。民主派勢力や少数民族武装組織は連携を強め、軍政打倒を掲げて各地で戦闘を続けている。民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」も活動を活発化させており、国家の分断は一層深まっている。

また、経済面でも打撃は深刻だ。クーデター以降、外国投資の撤退や制裁の影響で経済は低迷し、通貨安や物価上昇が市民生活を圧迫している。インフラの破壊、25年3月の大地震、行政機能の混乱も続き、復興の見通しは立っていない。

今回の大統領就任は軍政が国際的な批判をかわしつつ統治の正統性を装う狙いがあるとみられる。しかし、欧米諸国や国連は選挙の正当性を認めておらず、制裁の継続や強化の可能性も指摘されている。

ミャンマーは1962年以降、長年にわたり軍が政治に強い影響力を持ってきたが、2010年代には一時的に民主化が進んだ。しかし今回の動きは、その流れを完全に逆転させるものといえる。形式的な民政移行の裏で軍の実権支配が続く構図は、同国の政治的停滞を象徴している。

内戦の長期化と政治体制の固定化が進む中、ミャンマーが安定と民主化への道筋を取り戻せるかは依然として不透明である。今回の権力移行はその行方を左右する重要な転換点となる可能性があるものの、現時点では軍の支配がさらに制度化されるとの見方が大勢を占めている。

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