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ミャンマー軍政の選挙計画を批判した男性に7年の重労働刑

男性は軍政が年末に予定している総選挙を批判したとして、選挙に反対または妨害した者を対象とする選挙法に基づき起訴された。
2021年2月8日/ミャンマー、最大都市ヤンゴン、軍事政権に抗議するデモ(Getty Images/AFP通信)

ミャンマー軍政の選挙計画を批判した罪で起訴された男性が7年の重労働刑を言い渡された。ミャンマー国営放送(MRTV)が10日に報じた。

それによると、男性は軍政が年末に予定している総選挙を批判したとして、選挙に反対または妨害した者を対象とする選挙法に基づき起訴されたという。

男性は8月25日のフェイスブック投稿(現在は削除済み)で強盗事件の監視カメラ映像を掲載。軍政が公共の安全確保より選挙計画を優先していると批判した。

軍事法廷は選挙妨害未遂罪で男性に7年の重労働刑を言い渡した。

男性に弁護士がついているかは不明。控訴するかどうかも明らかになっていない。

軍政は年末に総選挙を行うと主張しているが、国土の半分以上を反体制派に占領された状態で行えるかは不明である。

ミャンマー内戦は2021年2月の軍事クーデター以降に激化。その根底には長年にわたる民族対立、民主化運動、軍事政権の強権支配という複雑な歴史的経緯がある。

クーデターでは、国軍がアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)の選挙勝利を無効化し、政権を掌握した。軍は不正選挙を理由にしたが、実際には民主化勢力の影響力拡大を恐れた権力維持の行動とみなされている。

このクーデターを契機に、都市部では若者や市民による大規模な抗議デモが展開されたが、国軍は発砲や恣意的拘束によって弾圧し、多数の死傷者が発生した。平和的な抵抗が困難になる中、市民の一部は武装闘争に踏み切り、各地で「人民防衛隊(PDF)」と呼ばれる武装組織が誕生した。これが内戦の直接的な発端となった。

もともとミャンマーには少数民族武装勢力(EAO)が複数存在しており、カチン、カレン、シャン、ラカインなどの地域では長年にわたる自決権や自治をめぐる武力闘争が続いてきた。

クーデター後、こうした既存の民族武装勢力と新たに結成されたPDFの間で連携が進み、国軍に対抗する統一戦線のような構図が生まれつつある。特に2023年以降、北部シャン州や西部ラカイン州では、民族武装勢力が国軍に対して大規模な攻勢を展開し、基地や国境地帯の支配権を奪う動きが強まっている。これにより、国軍は全国的に多正面作戦を強いられ、統制力の低下が目立ち始めている。

一方で、国軍は重火器や空爆を用いて反抗勢力を徹底的に弾圧している。村落の焼き討ちや住民虐殺、強制移住などが相次ぎ、国連や人権団体から戦争犯罪や人道に対する罪の疑いが指摘されている。特に空爆は民間人被害を拡大させ、避難民が増加した。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、国内避難民は数百万人規模に達しており、医療、教育、食料供給の崩壊が深刻化している。周辺国への越境避難も増えており、タイ、インド、バングラデシュなどに難民流入が及んでいるが、受け入れ態勢は十分でなく、多くの人々が困窮状態に置かれている。

経済面でも内戦は壊滅的な影響を与えている。外国資本は撤退し、観光業や輸出産業は縮小した。通貨チャットは急落し、インフレが進行、食料や燃料の価格が高騰している。加えて、国軍が外貨を確保するために天然ガスや鉱物資源を輸出に依存していることが、国際的な制裁強化と結びつき、さらに経済の不安定化を招いている。日常生活の困難さは市民の不満を一層強め、軍政の正統性を根底から揺るがしている。

国際社会はクーデターとその後の内戦に対して非難を強めているが、効果的な介入は難しい。欧米諸国は軍政に対する制裁を強化し、武器禁輸や資産凍結を進めているものの、ロシアや中国が国軍を支持する姿勢を示し、武器供与や外交的支援を続けている。このため、国連安全保障理事会での強い措置は阻まれている。他方、ASEANは対話による解決を呼びかけているが、加盟国間の立場の違いから実効性を欠き、停戦や政治的解決への進展は見られない。

一方、民主派は「国民統一政府(NUG)」を樹立し、国際的承認を得ようと努力している。NUGはPDFや民族武装勢力と協力し、軍政打倒と民主制回復を目指しているが、国内外での統一的支持はまだ限定的である。それでも国軍の支配力が地方で徐々に後退している現状は、内戦の行方を不透明にしている。

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