韓国の大衆歌謡「トロット」復活の兆し、SNSでバズ連発
トロットは1930年代に日本統治下の朝鮮半島で欧米のフォックストロットと韓国の伝統音楽などが融合して生まれた音楽で、特徴的な2拍子のリズムや深い感情を歌うスタイルで長年親しまれてきた。
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かつて多くの若者から「ダサい」「古臭い」と揶揄されていた韓国の伝統的な大衆歌謡「トロット(Trot)」が最近再び脚光を浴びつつある。トロットは1930年代に日本統治下の朝鮮半島で欧米のフォックストロットと韓国の伝統音楽などが融合して生まれた音楽で、特徴的な2拍子のリズムや深い感情を歌うスタイルで長年親しまれてきた。
かつては人気の中心だったものの、1990年代以降のK-popの世界的な隆盛に伴い、若い世代の関心は急速にそちらへ移った。その結果、トロットの主要な聴衆は中高年層に偏り、若者の間では敬遠される存在となっていた。しかし近年、ソーシャルメディア上でトロットが再評価される動きが起きている。
そのきっかけの一つとなっているのが、生成AI技術を用いたコンテンツ制作である。韓国のファンやクリエイターは、人気のK-pop楽曲をトロット風に“アレンジ”する生成AIミュージックや映像をSNSに投稿し、数十万回再生されるなどのバズを生んでいる。例えば若いクリエイターがAIでトロット調にアレンジした映像には、「むしろ新鮮」「親世代とも共感できる」といったコメントが寄せられ、話題を呼んでいる。
この動きにより、伝統的なトロットを現代風にアレンジするシンガーや若手のパフォーマーにも注目が集まる。テレビのオーディション番組では何万人もの応募者がトロット歌手を目指して競い、イム・ヨンウン(林英雄)さんのようにドームでのソロコンサートを成功させる例も出ている。ヨンウンさんは従来のトロットにバラードやポップ要素を取り入れることで、若年層の支持を得た。
しかし、再評価の動きが進んでいる一方で、トロットの未来については懸念の声もある。音楽評論家の中には、SNSでのAIトレンドは一時的なものであり、実際の音楽シーンや本来のトロット文化への理解・支持につながるかは不透明だと指摘する者もいる。また、AIでの二次創作には著作権や法的リスクが伴うため、クリエイター側も慎重にならざるを得ないという指摘が出ている。
さらに、トロット本来の持つ感情表現や歴史的背景を正しく理解する若い層がどれだけ増えるかも鍵となる。トロットの歌詞やメロディは、韓国の近代史や社会感情と深く結き、単なる“懐メロ”やミーム的なコンテンツとして楽しむだけでは、その本質は伝わらないとの声もある。
それでも、以前は話題にもならなかったトロットがネット上で再び注目され、若者の間で話題として取り上げられている現象は、韓国の音楽文化の幅広さを象徴する動きともいえる。トロットが今後どのような形で発展し、伝統と現代が融合した新たな音楽ジャンルとして位置づけられていくのか、関係者の関心が高まっている。
