◎昨年と一昨年のパレードはコロナウイルスの感染拡大だけでなく、保守系団体の声が高まったことで中止されたと伝えられている。
韓国のLGBTQ+(性的少数者)団体は16日、首都ソウルで3年ぶりとなるプライド・パレードを開催した。
地元メディアによると、大雨にもかかわらず数千人が参加し、LGBTQ+の権利拡大を訴えたという。
一方、LGBTQ+を「変質者」と呼ぶ保守的な団体もソウル市内に集結し、プライド・パレードを警護した警察官とにらみ合った。
地元メディアによると、韓国特有の髪を引っ張り合う乱闘や混乱は確認されなかったという。
このパレードは市内で毎年開催されている「コリア・クィア・カルチャー・フェスティバル」のイベントのひとつである。
警察はパレードルートの反対側に集まった保守的なキリスト教徒と思われる抗議団体を阻止するために境界線を設置した。
キリスト教徒たちは横断幕を掲げ、同性愛に反対するスローガンを唱え、団体のリーダーは「差別禁止法を阻止せよ」などと大声で叫んでいた。
一部の反対派はソウル市長がパレードを容認し続けていることに抗議した。AP通信の取材に応じた男性は、「淫らなゲイパレードは禁止すべきです」と訴えた。「パレード参加者は猥褻(わいせつ)な写真を掲げたり、露出度の高い服を着たりしています...」
パレードに参加した活動家の女性はパレード開始前の集会で、「ソウル市役所の保守的な公務員は定規で私のスカート丈を測り、短すぎると注意するつもりです」と語った。「公務員はスカート丈ではなく、LGBTQ+が置かれている差別的な環境に目を向けるべきです」
一方、パレードの主催者はメディアに対し、「参加者を撮影する場合は可能な限り遠くから撮影し、個人を特定できないようにしてほしい」と呼びかけた。これは参加者を差別や暴力から保護するためである。
ソウル警察庁の広報担当によると、パレードを監視・警護するために数千人の警察官が動員されたという。同庁はパレードの参加人数を発表していないが、一部の地元メディアは4万人が参加すると予想していた。
韓国の政治家はプライド・パレードに関する声明を避ける傾向にある一方、米国の駐韓大使を含む多くの外交官がパレードに参加した。
米国大使館前ではこの数週間、同性愛に反対する抗議デモが行われ、「バイデン政権の同性愛文化帝国主義に反対する」と書かれた看板が掲げられた。
イギリスの駐韓大使であるクルックス(Colin Crooks)氏は韓国語で、「性的指向や性自認に基づく差別は21世紀に存在しない」とスピーチし、喝采を浴びた。
韓国のLGBTQ+に対する見方は徐々に改善されつつあるが、ヘイトスピーチや差別は後を絶たず、多くの同性愛者が困難に直面している。
平等を求める声は強力な保守系・キリスト教団体の活動にかき消され、差別禁止法の制定を阻んでいる。
昨年と一昨年のパレードはコロナウイルスの感染拡大だけでなく、保守系団体の声が高まったことで中止されたと伝えられている。
2020年5月にソウルのナイトクラブで発生したクラスターでは性的少数者100人以上がコロナに感染し、国民の反発を招いた。
ソウルのカトリック系新聞は当時、「ゲイクラブでクラスター発生」と嬉々として報じ、人権団体から厳しく批判された。