◎金正恩は多くの国民が飢えているにもかかわらず核開発を推進し、韓国に条件付きの和平に向けた提案を行いながらミサイル実験を繰り返している。
2021年10月10日/北朝鮮、首都平壌で開催された朝鮮労働党創設76周年を祝う式典、金正恩 党総書記(朝鮮中央通信社/韓国通信社/AP通信)

10月11日、北朝鮮の金正恩 党総書記は与党朝鮮労働党が招いた致命的な食糧供給不足を克服し、国民の生活を改善するよう当局に強く促した。

国営の朝鮮中央通信社によると、金正恩は朝鮮労働党創設76周年を記念する式典の演説で当局に強力な努力を求めたが、米国と韓国には言及しなかったという。

米朝の核交渉は、北朝鮮に対する米国主導の厳しい経済制裁の影響で2年以上停滞している。経済制裁、コロナウイルスの発生に伴う国境封鎖、昨年の自然災害は北朝鮮を荒廃させ、深刻な食糧不足を招いた。

しかし、金正恩は多くの国民が飢えているにもかかわらず核開発を推進し、韓国に条件付きの和平に向けた提案を行いながらミサイル実験を繰り返している。

朝鮮中央通信は、「金 党総書記は以前の経済計画が失敗に終わったことを認めたうえで、当局は今年1月に発表した新たな経済目標の達成を決意していると国民に語りかけた」と報じた。

金正恩は演説の中で、「朝鮮労働党は経済成長を後押しし、国民の食料、衣料、住宅問題を解決するための新たな5か年計画を効率的に実行する」と約束した。

また金正恩は、北朝鮮が直面している前例のない危機を分析し、厳しい状況に直面している国家経済を発展させようとする朝鮮労働党のひたむきな努力を称賛し、国民に団結を呼びかけた。

韓国のアナリストは、金正恩は就任以来最大の危機に直面していると指摘した。

金正恩は2018年に当時のドナルド・トランプ大統領と会談し、韓国の文在寅 大統領とも和平に向けた協議を複数回行ったが、交渉は2019年に破綻した。

一方、世界保健機関(WHO)は先週、コロナウイルス関連の医薬品の一部が北朝鮮の港に到着したと発表した。これにより、北朝鮮は1年以上継続している世界で最も厳しい国境封鎖を緩和し、外部の支援を受け入れたことが明らかになった。

金正恩は米韓合同軍事演習を含む「敵対的政策」を米国が放棄しない限り、対話を再開することはないとバイデン政権に揺さぶりをかけている。

ジョー・バイデン大統領は北朝鮮との対話を望んでいるが、北朝鮮が核開発および核保有を放棄すると約束しない限り、経済制裁の緩和に向けた交渉は始まらないと述べている。

しかし、北朝鮮は先日、南北通信ホットラインを復旧し、「韓国が北朝鮮に対する敵対的な視点と米国寄りの姿勢を改めるのであれば、二国間の関係改善に向けた交渉に応じる」と述べた。

一部の専門家は、「北朝鮮は厳しい経済制裁、コロナウイルスの感染拡大、食糧危機に耐え兼ね、韓国に米国を説得し、制裁を緩和させるよう圧力をかけている可能性が高い」と指摘した。

1994年から1998年頃に北朝鮮で発生した壊滅的な飢餓による餓死者および栄養不足に関連する病で死亡した市民は200万~350万人と伝えられているが、正確な死亡者数は明らかにされていない。

2018年5月26日/北朝鮮の板門店、金正恩 党総書記と韓国の文在寅大統領(AP通信/韓国大統領府)
アフィリエイト広告
スポンサーリンク